ブックタイトル血管内皮機能を診る

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概要

血管内皮機能を診る

血管内皮機能異常が起こるメカニズム7図1?6 ずり応力による血管内皮細胞の変化a. 安定したずり応力では,生理的な伸展刺激と圧刺激が加わる.血管内皮細胞は紡錘形に整い,その大きさと配列方向が一定であり,細胞間接着は強固である.b. ずり応力が減少する狭窄部の下流などの部分では,乱流や渦流が発生し,血管への過度な伸展刺激や圧刺激が加わる.このような場所では,血栓形成や動脈硬化が起こりやすい状態となる.ずり応力のない状態では,血管内皮細胞は大小不動の不整形となり,その配列に秩序性がない.内皮細胞表面には接着因子が発現し,活性化した単球が接着しやすい状況になるとともに,血管平滑筋や線維芽細胞を増殖させる因子が過剰に産生される.a b層流核核細胞質細胞質乱流・渦流図1?7 ずり応力が血管内皮細胞の炎症・凝固機能に与える影響安定したずり応力は,血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)やトロンボモデュリン(TM)を活性化する転写因子,Kruppel?like factor 2(KLF2)を活性化することで,炎症や凝固促進状態を惹起する核内転写因子のNF?κB を競合的に阻害し,抗炎症・抗凝固作用を発揮する.TM は,内皮細胞上でトロンビンを凝固酵素から抗凝固酵素へと変換する膜タンパクであり,eNOS は一酸化窒素(NO)の合成を促進する.NF?κB は,PAI?1,VCAM?1,TF の発現を亢進させるとともに,さらに炎症惹起性サイトカインの産生を亢進させることで,炎症や凝固を促進する.ずり応力血管内皮細胞受容体サイトカインKLF-2 NF-κBTMeNOSNO抗炎症・凝固抑制炎症・凝固促進VCAM-1PAI-1TF