ブックタイトル血管内皮機能を診る

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概要

血管内皮機能を診る

循環器予防医学における血管内皮機能の位置付け17が重要であるが,より早期の変化を鋭敏に反映する効果判定指標が不可欠である.たとえば,体格指数(body mass index:BMI)30 kg/m2のメタボリックシンドローム患者に食事・運動指導を行い,その介入効果を判定する場合,脈波伝播速度検査*18(pulse wavevelocity:PWV)は1 つの効果判定指標として有用である.ただし,血圧コントロールが良好な肥満患者やメタボリックシンドローム患者においては,正常値を取ることが多く,たとえ異常高値であった場合でも,その改善効果が検査データに反映されにくい.PWV 高値の場合に,減量や運動不足解消などの介入を行った場合,その改善効果を認めるのには半年から数年の期間を要することが少なくない.一方,血管内皮機能については,介入開始から3~4 週で明らかな改善効果が認められるため,患者指導における「がんばった効果の見える化」ツールとして血管内皮機能検査は有用である. 超高齢社会となった我が国において,循環器疾患の終末像である慢性心不全は着実に増加し続けており,その再発性の高さに起因する社会的負担の増加や繰り返す救急発動が,医療現場の疲弊と医療費の高騰を招いている.循環器予防医学の目指すところは,心血管病患者の予後とQOL を改善することである.そのためには,動脈硬化性疾患の発症・進展を予防すること,さらには,虚血性心疾患を基盤とする慢性心不全の発症を予防することが,われわれに与えられた社会的要請である. Braunwald’s HEART DISEASE 9th edition のなかで,冠動脈疾患の一次予防と二次予防に関する概念図が掲載されている.そこでは危険因子を,予後予測因子(predict risk)と予後改善因子(reduce risk)との2 群に分け,いわゆる,従来からの「冠危険因子」とされる「修正可能な因子」は,その2 つの因子群の重なる部分に位置付けられている.この概念は循環器予防医学における包括的なリスク管理を考えるうえで,大変重要であると思われる(図1?18).特筆すべき点は,危険予知の評価因子として,運動耐用能検査や循環器8.循環器予防医学における血管内皮機能の位置付け*18 動脈が硬いほど心臓から拍出された血液による拍動の伝わる速度が速くなることを利用し,2 ヵ所の拍動(脈波)が伝わる速さを測定して,血管の硬さを評価する検査.動脈硬化の指標の1 つとして用いる.表1?2 血管内皮機能測定の算定条件(平成26 年度医科診療報酬点数表)細目区分記載事項第2 章 特掲診療科第3 部 検査第3 節 生体検査料呼吸循環器機能検査等D207体液量等測定4.血管内皮機能検査(一連につき)200 点通知(5) 「4」の血管内皮機能検査を行った場合は,局所ボディプレティスモグラフ又は超音波検査等,血管内皮反応の検査方法及び部位数にかかわらず,1 月に1 回に限り,一連として当該区分において算定する.この際,超音波検査を用いて行った場合であっても,超音波検査の費用は算定しない.