ブックタイトル神経診察の極意
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神経診察の極意
推薦のことば私は1976年(昭和51年)から自治医科大学神経内科で臨床研修を受ける機会に恵まれた.当時の自治医大では毎週のように,米国でレジデントを経験された水野美邦先生,清水夏絵先生が神経学的診察法を繰り返しデモしてくださり,新入院が10人あれば10回,研修医・医学生はあたかもビデオを何度もみるように,米国式の系統的な診察法と局在診断の考え方を目の当たりにしながら学ぶことができた.研修医や医学生が神経学的診察の技法を身につける上で,こうした方法は極めて有効であったが,教職につく時代になると,患者さんから「たくさんの人の前に引き出されて,モルモットにされた」というクレームを受けることがあり,このようなやり方は難しくなった.爾来,神経学的診察の技法を次世代にどのように伝えるのがベストの方法か,ずっと模索することとなった.神経学会の専門医試験で実技の試問を担当すると,神経学的診察法の習得が不十分な受験生の多いことがすぐに実感された.また,症例サマリーを査読すると,診察に続いて画像検査をした上で神経学的局在診断に入るものが多くあり,神経学的診察の結果から局在診断を考察し,病変部位を想定した上で画像検査に進むという神経学的診断法の基本的な考え方が,現場ではもはや守られなくなっているように感じられた.こうした状況に危機感を覚え,MDSJ(日本パーキンソン病・運動障害疾患学会)恒例のビデオカンファレンスで鋭いご意見を述べてこられた廣瀬源二郎先生に,この数年お目にかかる度に,「先生の神経学的診察法をぜひ書物として書き残していただきたい」とお願いしてきた.なかなか前向きのお返事をいただけなかったが,この度,廣瀬神経学の神髄を平易に書き下ろされた書籍が刊行されることになった.一読すれば,廣瀬先生がどのように病変の局在を考えながら神経学的診察を進めていくのか,鑑別が必要な時はどのような所見を確かめて判断を下すのか,が分かり易く明示されており,神経学的局在診断の道筋を,先生に直接指導していただいているように学ぶこと