ブックタイトルエキスパートが本音で明かす 不整脈診療の極意
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エキスパートが本音で明かす 不整脈診療の極意
91.ST-T 解釈の極意称か非対称かによって4 つに分類した(図1 - 2).T 波が左右非対称で陽性というのが,前述のごとく正常所見である.これに対し,T 波が陽性かつ左右対称になっているものに,sharp ST-T angle とテント状T が含まれる.すでに述べたように,sharp ST-T angle はT波が減高をしているものを指し,比較的高率に心疾患,とくに虚血性心疾患や左心機能障害を示す所見である.これに対し,幅の狭いT 波でかつT 波が増高している場合はテント状T とよばれ,高カリウム血症を示唆する所見である.いずれの所見もT 波の幅が狭く,左右対称に近いのが特徴である.? 一方,陰性 T 波にも,左右非対称のものと対称に近いものとがある.左右非対称のものは,ST が緩徐に下降し陰性T となったのち,急峻に基線に戻るパターンを示す.その代表的なものが左室肥大にともなうストレインパターンである.また,虚血性心疾患においても同様のST-T 形状をともなうST 下降を示すことも知られており,これを下行傾斜型ST下降とよぶ.左室肥大にともなうストレインパターンと虚血にともなう下行傾斜型ST 下降は,QRS の左室電位が大であるか否かという点においては異なるが,ST-T の形状上の鑑別は困難である.したがって,左室高電位を有する症例のこのパターンのST-T の異常は,左室肥大か心筋虚血かの区別は困難である.また,ジギタリス服用によるジギタリス効果としてこのパターンのST 下降が現れることもある.すなわち,ジギタリスは盆状降下型のST 下降を示すことがよく知られているが,このパターンのST 下降をとることも図1-1 運動負荷心電図運動負荷後にはⅡ,Ⅲ,aⅤF,Ⅴ4 からⅤ6 に明瞭な下行傾斜型ST 下降(緑矢尻)を認めるが,負荷前の心電図では同様の誘導にsharp ST-T angle(白矢尻)を認める.運動負荷前運動負荷後運動負荷前運動負荷後Ⅰ Ⅴ1Ⅱ Ⅴ2Ⅲ Ⅴ3aⅤR Ⅴ4aⅤL Ⅴ5aⅤF Ⅴ6