ブックタイトルエキスパートはここを見る心電図読み方の極意

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エキスパートはここを見る心電図読み方の極意

15318.心臓再同期療法(CRT)に適した心電図とは?はじめに? 重症の左室収縮不全患者では,しばしば房室伝導障害や左脚ブロック(LBBB)などの心室内伝導障害を合併し,収縮のタイミングがずれることで,心拍出量が低下する.左室収縮不全における伝導障害は,重要な心不全予後規定因子となり,これを改善することが心不全予後を,さらには生命予後を改善することにつながると考えられ,心臓再同期療法cardiac resynchronization therapy(CRT)は始められた.? CRT は,1990年代に心室非同期収縮を伴った左室収縮不全の治療として両室ペーシングを行ったことが始まりであり,両室および左室内の非同期を改善し,収縮効率を上げることで心拍出量を増加させる.? これまでに,その効果を検証する無作為化比較前向き試験が多数報告されており,現在の日本循環器学会ガイドラインでは,① 十分な薬物治療を行っても改善しないNYHA(NewYork Heart Association)心機能分類Ⅲ度ないしⅣ度の慢性心不全で,② 左室駆出率(LVEF)35% 以下,③QRS 幅120ms 以上の心室内伝導障害を有する場合をCRT のクラスⅠ適応としている1, 2).? しかしながら,この基準を満たしている症例の約30% が CRT 不応例であり,逆にこれらの基準を満たさない症例においても効果を認める患者がいることが臨床的に経験される.本章では,どのような患者にCRT を行うとより効果的なのかという点について,自験例も交えながら示していきたい.CRT適応はどのように考えるべきか?心不全の重症度ではどうか?? 当初の臨床試験は,薬物治療抵抗性の重症心不全を対象に CRT の短期効果を検証した試験であった.そんななかで,2004 年に発表されたCOMPANION 試験は初めて生命予後(全死亡および全入院)を一次エンドポイントとして行われた無作為化大規模比較試験であり,CRT は薬物治療群と比べ全死亡および心不全入院を改善する結果となった3).その後のCARE-HF 試験でも,心室性不整脈に対する植込み型除細動器(ICD)適応のない重症心不全患者を対象に,CRT-P(ペーシング機能のみのCRT 治療)を薬物治療に加えた群と薬物治療群を比較した結果,標準的治療にCRT-P を加えた群は死亡率を有意に抑制した4).この結果,非同期収縮のある左室収縮不全例には,標準的薬物治療に加えてCRT を積極的に行うことが推奨されるようになった.A心臓再同期療法(CRT)に適した心電図とは?K O18