ブックタイトル医療機関における新型インフルエンザ等対策 ミニマムエッセンシャルズ

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概要

医療機関における新型インフルエンザ等対策 ミニマムエッセンシャルズ

監修の言葉2003 年に世界的に流行した重症急性呼吸器感染症Severe Acute Respiratory Syndrome(SARS)は,世界を震撼させた.そのプロローグとしては,1997 年香港における鳥インフルエンザA(H5N1)の初めてのヒト感染の出現で,18 例中6 例が死亡し,感染源が疑われた約10 万羽のニワトリが殺処分されたもので,A(H5N1)がパンデミックを生じた場合の危惧が高まり,いわゆる新型インフルエンザ発生に関する関心が高まったといえる.SARS は当初はA(H5N1)ウイルス感染の流行の拡大が疑われたが,ほどなく新たなウイルスが病原体として同定されSARS コロナウイルスと命名された.いつ,だれが,どこで感染し,その予後は,どのようにして感染を防ぐか,診療は,行政の対策は,日常生活は…などわからないことだらけで不安が渦巻いたが,やがて皮がむけるように一つひとつわかってくることが増えてきた.この時の経験が,世界的にも,国内的にも,地域的にも不明疾患の早期検知,検査,サーベイランス,いろいろなセクターの協力,そして感染症に対するあらかじめの準備の重要さとして理解されるようになった.そして2009 年,A(H1N1)pdm 09 によるパンデミックの発生となったが,発生寸前には「行動計画」や「ガイドライン」が曲がりなりにもできあがっていたことは,発生時に大変心強いものであった.少なくとも物差しになるものがあり,それに則って修正を加えていけばよいと思えた.しかし送り手はそれを十分に説明する時間がなかった.さらに受け手はそれを咀嚼する余裕はなかった.そしてそこにいろいろな食い違いも生まれた.さらにはパンデミックが進行するについて,変更すべきものがなかなか修正できないかと思えば,突然に修正されてしまうものもあるなど,混乱を来したことも事実である.これまでのパンデミックについては,1918 年発生のスペインインフルエンザの後に発刊された『流行性感冒』(内務省編),1957 年発生のアジアインフルエンザの後に発刊された『アジアかぜ流行史』(日本公衆衛生協会編)などが記録として残されている.当時の不十分な状況の中,今でも感嘆する詳細な記録,あるいは,今であれば…と思われる記録など様々であったが,パンデミックをイメージし,「新型インフルエンザ対策行動計画」「新型インフルエンザ対策ガイドライン」の策定にあたっては,多くの示唆を与えてくれた.私たちは,先達が残した記録のお蔭で,2009 年のパンデミックに対しておそらくはスペインインフルエンザあるいはアジアインフルエンザの時代よりは良い対応・対策ができたであろう.しかし今回の対応・対策は到底十分なものではなく,思い出すのも身が縮む思いのことが多々ある.新たなパンデミック,あるいは不明感染症は必ずいつか生じる.これに対して2009 年パンデ