ブックタイトルNICUにおける抗菌薬の使い方10の秘訣
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NICUにおける抗菌薬の使い方10の秘訣
急速な医療の進歩により新生児領域においても死亡率は減少しているが,その死亡原因として細菌感染症は依然として問題である.特に超低出生体重児については出生時より長期に新生児特定集中治療室(neonatal intensive care unit;NICU)内で加療されるため,細菌感染症はすべて施設内感染ということになる.近年,耐性菌の増加などの背景から細菌感染症治療が難渋する場合も少なくなく,早期発見,早期治療が重要な課題となっている.また,新生児はすべて易感染性を有しており,感染予防のために抗菌薬が投与されるケースも少なくない.本項では,細菌感染に関する新生児の特殊性について述べる. NICU における感染は一般的に前期破水,母体感染症,機械的人工換気,中心静脈カテーテル,中心静脈栄養などと関連していると考えられている. 新生児の免疫機能は未熟であり,常在細菌叢は変動しやすく,さらに出生体重1,500 g 未満の極低出生体重児では,気管内挿管,血管内留置カテーテル,動脈ライン確保,バルーンカテーテル,胸腔ドレーン留置などの処置を必要とすることもあり,感染発症の危険因子となる.表1?1 に新生児感染症の生理的危険因子を示す.免疫機能など生体防御機構の未熟さについては後述する.無菌状態で出生するため,環境からの細菌が気道・皮膚・腸管に定着しやすい点についても後述するが,常在細菌叢の形成は保育器に収容するだけでも変化し,酸素投与・抗菌薬投与により大きく変化する.新生児,特に低出生体重児では,細菌感染における侵入門戸として腸管と皮膚が挙げられる.したがって,皮膚のみならず常在細菌叢の変動にも注意が必要となる.細菌感染発症の危険因子2細菌感染に関する新生児の特殊性1表1?1 新生児感染症の生理的危険因子① 免疫機能など生体防御機構が未熟なため,微生物の感染に弱く重篤化しやすい.② 無菌状態で出生するため,環境からの細菌が気道・皮膚・腸管に定着しやすい.③ 皮膚が薄く,損傷を受けやすく菌の侵入門戸になりやすい.④ 母体が感染すると子宮内感染や産道感染を来すことがある.⑤ 明らかな細菌感染の徴候を捉えられないため抗菌薬投与される機会が多く,耐性菌の選択が起こりやすい.