ブックタイトルぶらなび 血液疾患診療ナビ 改訂2版
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ぶらなび 血液疾患診療ナビ 改訂2版
●● プライマリ・ケアの診療で,発熱,咽頭炎,リンパ節腫脹に加えて,末梢血液中に異型リンパ球の増加を認める思春期患者を診たら,伝染性単核球症infectious mononucleosis(IM)を疑う.●● IMは Epstein-Barr virus(EBV)の初感染によって引き起こされる急性感染症である.●● IM と同様の病像を呈するにもかかわらず,急性 EBV 感染とは診断できない場合があり,「単核球症類似疾患mononucleosis-like illness」と呼ばれるが,その原因として重要なものは,サイトメガロウイルスcytomegalovirus(CMV)の感染である.伝染性単核球症と単核球症類似4-J 疾患1. 伝染性単核球症の病態◆◆ EBV は思春期までに 80 ~ 90%の小児が罹患するが,通常は無症状か非特異的な感冒症状を呈するのみである.残りの10%のものは,思春期に初感染し,潜伏期30 ~ 50 日を経てIMを発症する1, 2).EBV に一度感染すると,その後は生涯にわたり潜伏感染状態となり,症状がないまま口腔咽頭から間欠的にウイルスが排出される.既感染者の唾液中に存在するEBV が,非感染者に伝播することによって感染が成立するため,“kissing disease”として知られるが,その病歴が役に立つことはあまりない3).◆◆ 主要な症状が,全身倦怠感,発熱,咽頭痛であるため,プライマリ・ケアの外来では,「喉症状メイン型」の風邪との鑑別が重要である3).◆◆ 特徴的な身体所見は,白苔を伴う滲出性扁桃炎(「毛布のような」白苔がべったり付着しているのが特徴),咽頭炎,リンパ節腫脹である.前頸部だけでなく,後頸部のリンパ節腫脹を認めることが多いことは有名であるが,腋窩や鼠径のリンパ節腫脹が認められることもある.脾腫があれば,IM の疑いはより濃厚となる(陽性尤度比7.0)2).◆◆ 合併症としては,肝機能障害(一過性の AST/ALT の上昇)の頻度が高い.まれに,脳炎などの神経系合併症,脾破裂,咽頭または気管傍リンパ節の腫脹による上気道閉塞などが発生することがある.2. 伝染性単核球症の診断◆◆ 末梢血所見:白血球総数が正常~やや増加し,白血球分画でリンパ球の著しい増加(50%以上)と,異型リンパ球(? MEMO「異形リンパ球」参照)が認められる(10%以上).178