ブックタイトル目指せ感染症マスター!抗菌薬処方支援の超実践アプローチ
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目指せ感染症マスター!抗菌薬処方支援の超実践アプローチ
34Q1 ここまでのカルテ情報から,担当医へどんな抗菌薬をおすすめしますか?A1抗菌薬の提案に向けたベッドサイド・外来での情報収集訪室すると,患者はベッドの上で座っていた.呼吸状態は,室内気でSpO2 99%,呼吸回数も15回/分で頻呼吸ではない.意識消失した時の記憶はなく,入院時からの発熱は少しつらい程度,食欲はあり,吐き気はないとのことであった.入院後の尿回数は8回/日(ベースラインから多少悪化)であった.発熱は,変わらず37℃から39℃を行ったり来たりするspike feverの状態である.患者は,発熱以外主訴はなく,意識状態もよく,食事もおいしく食べていると話していた.Janeway病変やRoth斑,結膜の点状出血などはみられなかったが,逆に感染の病巣を示す特異的な所見がはっきりしないこと,多発性脳梗塞という点から疣贅(vegetation)が脳に飛んだ可能性を考え,「感染性心内膜炎(infective endocarditis;IE)も鑑別に入りませんか?」と担当医に伝え,血液培養2セットと経胸壁心エコーのオーダーを提案したところ実施となった.一般には薬剤師の提案がすんなり受け入れられることは少ないかもしれないが,ここは脳神経外科であり,心原性塞栓症の原因の一つにはIEの可能性も否定できるまでは絶えずどこかで考えながら治療にあたる診療科のため,提案が受け入れられやすい背景があるのかもしれない.ただし,どの診療科であってもIEを疑ったら血液培養と心エコーは必須の検査であるため可能なら薬剤師からも提案したい.経胸壁心エコー(TTE)の所見では,vegetationは特にみられなかった.しかし,これだけではIEは否定できない.IEの半数以上ではTTEでvegetationが確認できないからである(感度44%,特異度98%).経食道心エコー(TEE)(感度94%,特異度100%)に比し,TTEは感度が低いことが分かっている1).したがって,IEを疑った時のTTEの結果の解釈は,vegetationが認められればほぼ確定であるが,陰性でも否定はできないということになる.そこで,IEも鑑別診断に挙げた状態で治療を進めてもらうことにした.一方,本症例では全身状態が悪くなかったため,この日まで発熱はあるものの抗菌薬は処方されておらず,起因菌をつめる上で「抗菌薬を使用していないこと」が幸いしたケースであった.なぜなら,どこの感染症かも鑑別疾患に挙げないまま,ただ何となく「感病院によってはSpO2をモニターしていても呼吸数はモニターしていないところもあると思います.呼吸数をモニターすることの重要性はどんなところにありますか?呼吸数はSpO2同様に低酸素血症を来すような呼吸器感染症の治療効果の重要な指標になることは言うまでもありません.では呼吸数はいらないのでは?と思いがちです.しかし,SIRSの基準の一つであるように,呼吸器感染症以外の敗血症を来している全ての感染症の重症度や治療効果判定の指標にもなるのです.敗血症患者さんの効果判定に騙されたと思って呼吸数をみるようにしてみてください.思いのほか使えますよ.多くの施設ではTTEは施行できてもTEEまでは難しい現状があると思います.そのような中でのIEが鑑別にあがった場合の対応(診療)としてはどのように進めていくとよいのですか?第2章 抗菌薬処方支援の実践!