ブックタイトル在宅医療X感染症
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在宅医療X感染症
大曲:時々このような事例の相談をいただきます.主に抗菌薬治療についての相談です.在宅患者さんは一般的にそれまでの過程で医療に濃厚に曝露されている方が多いです.したがって,通常は抗菌薬耐性菌の関与を考えたくなります.そこを意識すると抗菌薬は広域になる傾向があります. また悩むのは治療薬の投与方法です.病院であれば1 日数回の点滴が普通ですが,在宅ではそれは無理というのは私もわかります.できれば1 日1 回のものがよい,また経口抗菌薬が内服できればよいと思います.しかし在宅の方は嚥下に問題がある場合も多く,現実的には使えないことも多いです. ということで,現実には治療の方針決定はなかなかに難しいと思っています. また一般的にがん患者さんの肺炎は予後が良くないということも,判断の材料として入れるべきと思います.だからこそ難しいですが…. 遠藤:末期がんの患者さんは「自宅で最期を迎えたい」という希望をもって在宅医療を選択していることが多いように思います.もちろん,残された時間をどのように過ごすのか,また家族はどう考えているのか,などを踏まえて,治療を行うようにしています.本人は在宅で過ごしたいと思っていても,家族は実は,病状の悪化時の対応に不安が強く,なるべく早めに入院させたいと希望していることも多いのです.いずれにしても,感染が疑わしい場合は,往診時に診察の上,採血を行うことが多いです. 抗菌薬投与の適応がある場合は,① 経口が可能な場合レボフロキサシン(クラビットR)やセフカペン(フロモックスR)など広域のものを処方することが多いです.② 経口摂取困難な場合,または重症度が高く点滴投与が必要と考えられる場合セフトリアキソン(ロセフィンR)2 g +生食100 mL などを数日間行います.やはり1 日1 回で対応できる薬剤が現実的です(表2-1). 連日点滴を行うことは,毎回針を刺すことが患者さんの苦痛になるということもありますので,留置針を使用してヘパリンロックを行い,点滴後に包帯で巻いて固定して2日目以降は訪問看護師と分担して連日訪問します.症状が改善したことを確認し,抜針します.一般的には表のようなスケジュールでしょうか(表2-2). 実際にはこの方法で入院せずに済むケースが大半ですが,中には症状が悪化し入院を依頼せざるを得ないこともあります. 今回のケースの場合は,患者の予後が短いわけではない(数か月はある)こと,本人の自宅療養継続の希望が強いことなどから,自宅で点滴を行う方がふさわしいように思広域か狭域か? 経口か点滴か? 治療方針を巡って感在宅では…在肺 炎8