ブックタイトルトラベル&グローバルメディスン

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概要

トラベル&グローバルメディスン

12 医学的配慮を要する渡航者227慢性疾患・外傷・手術歴のある渡航者 成人渡航者の約3 割が慢性疾患をもっていると報告1)されているが,世界の傾向として糖尿病を筆頭に生活習慣病有病者数は増加傾向である2)ことを念頭に入れる必要がある.なお,機内環境が健康におよぼす影響に関しては4?H を参照されたい. どのようなコントロール状態の慢性疾患であろうと,渡航前に人間ドックや全身の健康診断を受け,厳密なコントロール下になることが必要である.また,食生活・運動量・環境が変わることにより自国内における状況と変わることも主治医は十分に予見し,アドバイスを与える必要がある.持参薬・処方薬の海外持ち込みがある場合には英文処方証明書(コラム5 参照)を付帯し,その都度領事館・大使館などに確認を取り,持ち込み可能な最大量を知る必要がある.一部を巻末資料⑬に紹介するが予告なく変更になることがある.①  糖尿病 成人糖尿病患者が4 億2,200 万人(世界人口の8.5%)になったとWHO は2016 年4 月6 日に発表した3).これからも急増する慢性疾患として軽視できない.糖尿病患者が搭乗する場合,事前に航空会社へ申し込めば糖尿病食の注文が可能だ.英文診断書・処方証明書の必携を条件に機内にインスリン注射器を持ち込める.インスリン使用の有無にかかわらず,血糖測定器・試験紙・血糖測定用針・低血糖時用ブドウ糖入りのスナック・栄養補給スナックなどの持ち込みは賢明だ.インスリン使用患者では,十分な量の血糖測定用針・アルコール綿を許可を得た上で携帯する.インスリンは凍結する恐れがあるため預け入れはせず,必ず機内に持ち込むようにする.熱帯・砂漠への渡航や移動時には温度管理のできる器具を使用すると良いだろう.なかには自動車の電源を使用できるものや,保冷剤で適温にて移動できるタイプも市販され,国内旅行でも重宝する. インスリンの自己注射を行っている患者では,時差により微調整が必要となる.時差が3 時間以内であれば調節は不要だが,3 時間を越える場合,インスリン投与の自己調節を表12?A?1 のように行う.機内では速効型インスリンのみ使用することに注意したい.また飛行機の揺れなどにより機内食の配膳を途中で中止する場合があるため,必ず手元に食事が運ばれてからインスリンの自己注射をしたほうが安全だ.機内での血糖コントロールの重要な目標は低血糖を起こさないことである.詳細はインスリン処方医と要相談である.長期滞在者の場合はコラム5 を参照されたい.A12 医学的配慮を要する渡航者行動は優先度を明確に表す.マハトマ・ガンディ