ブックタイトルエキスパートに学ぶパーキンソン病・パーキンソニズムQ&A
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エキスパートに学ぶパーキンソン病・パーキンソニズムQ&A
1236.症状の日内変動が著しい進行期パーキンソン病に対して,どのようにL-ドパ治療をしていくべきか?(ADL)を障害するような強いジスキネジアもみられなくなった.L -ドパ薬物動態プロファイルを観察すると,入院時の検査で午前中および夕方にみられた血中濃度の低下はなくなり,1.0~2.0μg/mL のあいだに維持されていた.その後,症状は改善し,退院となった.総合解説 パーキンソン病治療開始後,約5~ 10年を経ると,ジスキネジアなどの運動症状の日内変動motor fluctuation により治療に難渋することをしばしば経験する1).運動合併症の出現には,脳変性の進展とともにL -ドパの長期服用が深くかかわっている.そのため,パーキンソン病の初期治療にはドパミンアゴニストの使用を優先するよう推奨されている2).しかし,治療効果および運動合併症以外の安全性のいずれにおいても,L -ドパはドパミンアゴニストよりも優れるため,いずれかの時点で治療の主体を担うことになる. ジスキネジアなどの運動合併症がすでに出現した患者では,L -ドパ血中濃度の日内変動は,脳内ドパミン濃度の推移とよく一致することが知られている.運動合併症では,運動症状の日内変動を詳細に観察し,L -ドパ血中濃度の推移を推測しつつ,薬剤調整を行って軽減を図る.難治例には,L -ドパ血中濃度プロファイルを同時に確認し,その結果にもとづいた薬剤調整が有効である.いずれにしても,運動合併症の治療は患者の特性や生活状況を把握し,以下の特徴をふまえて個別に治療計画を立てることが大切である.1.運動症状の日内変動 運動症状の日内変動には,「ウェアリング・オフ」のほかに,no on,delayed on,on-offが含まれる.ウェアリング・オフ現象とは,抗パーキンソン病薬の効果持続時間が短縮し,薬物濃度の変動とともに症状が変動する現象であり,次の時間に服用する前に薬剤の効果の消退を自覚する.ドパミン神経は,ドパミンを産生,放出するほかに,ドパミントランスポーターを介した再取り込み機構により,シナプス間隙のドパミン濃度を一定に保つ働きをもつ.変性によりドパミン神経が失われると,ドパミンの再取り込み機構も失われるため,ドパミンが薬剤として補充されるたびに刺激が発生するものの,すぐに消退してしまい薬効変動をきたす.こうしてウェアリング・オフが出現する.解決には,L -ドパの末梢における分解酵素であるCOMT 阻害薬や,脳内ドパミンの分解を行うモノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬を併用することが有効である. no on やdelayed on は,おもにL -ドパの吸収遅延によって起こると考えられている.no on はL -ドパを服用しても効果発現がみられないもの,delayed on は効果発現に時間を要する現象をよぶ.L -ドパの吸収点は上部小腸にあるため,自律神経障害のため胃排泄時間が延長しやすいパーキンソン病患者では,食後服用しても薬剤がすぐに吸収点まで到達しないことがある.この場合には,服用薬を食前に変更すると改善されることが多い.on-off はスイッチを入れたり切ったりするように,急激に症状が変動する現象であり,その出現は予測が困難で,定まった解決法はない. 運動症状の日内変動と薬剤の関係を知るためには,患者自身が記録したパーキンソン病症状日誌が非常に有効である(図6 - 3).それでもうまくいかない場合には,本症例のようにL -ドパ薬物動態プロファイルと症状との関連を測定することによって,より正確なコント