ブックタイトルエキスパートが現場で明かす 心不全診療の極意

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エキスパートが現場で明かす 心不全診療の極意

46Ⅰ.慢性心不全における基本治療いう確固としたエビデンスはない.現段階では,どの薬を使うかよりも,どれだけ血圧を下げられたかの方が拡張機能改善を達成するためには重要であると考えられている.しかし,拡張障害の予防において,どれくらいの降圧が必要であるかは知られていない.年齢,有しているリスク因子の数,拡張障害の程度などから個々の患者に適切な降圧の程度を判断する必要があると考えるが,早期の積極的な治療介入が重要である.・ まずは心エコー図検査,BNP 値などで,早期にかつ適切に拡張障害の存在ならびに重症度を把握することが大切である(図8 - 1).・ 治療に関しては,高血圧を合併している場合は厳格な降圧治療が必要である.高血圧を合併していなくても,ACE 阻害薬/ARB,β遮断薬,抗アルドステロン薬は拡張不全の生命予後を改善させることは証明されていないが,心不全入院を減らすことが期待されているために,投与すべきである.高血圧を合併している場合はどの降圧薬を用いるかが問題となるが,ACE 阻害薬/ARB とβ遮断薬を中心に用いるべきと考える.つぎに心房細動を合併している患者は,β遮断薬による徐拍化ならびにカテーテルアブレーションなどによる洞調律維持も考慮すべきである.・ ほかに治療介入できる余地のあるリスク因子には積極的に介入すべきであるので,他のリスク因子の管理も重要である(図8 - 2).私見ではあるが,筆者は拡張不全患者に対する薬物療法としては,高血圧の合併に関係なく,まずはACE 阻害薬/ARB と抗アルドステロン薬の投与を行っている.さらに余裕があればβ遮断薬の投与を考慮している.心房細動の合併など頻脈傾向であれば,β遮断薬の投与を優先する.・ 拡張不全はさまざまな病態が絡み合った複雑な心不全であり,かつ特効薬がない.それゆえ,個々の症例で何か治療介入できるかを考えて,心不全を管理しなければいけない.図8-2 拡張障害の治療のフローチャート拡張不全体液貯留(+)利尿薬高血圧(-)①ACE阻害薬/ ARB②抗アルドス テロン薬③β遮断薬心房細動(+)①β遮断薬による 徐拍化②カテーテルアブ レーションもし くはアミオダロ ンによる洞調律 の維持高血圧(+)厳格な降圧治療①ACE阻害薬/ ARB②β遮断薬③Ca拮抗薬リスク因子の合併(+)付随するリスク因子のコントロール①糖尿病②肥満③睡眠時無呼吸 症候群④冠動脈疾患私のとっておきの極意