ブックタイトルエキスパートが現場で明かす 心不全診療の極意

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エキスパートが現場で明かす 心不全診療の極意

478.拡張不全に薬は効くの?糖尿病? 糖尿病は高血圧,肥満,冠動脈疾患と独立して拡張障害に寄与していることが示されており,とくに高血圧と相乗的にはたらくことが知られている.糖尿病患者において心不全発症リスクが高いことが報告されており,拡張機能への影響も多く検討されている.糖尿病の状態が悪いほど拡張機能は悪いことが知られているが,糖尿病治療によって拡張機能障害が改善するかどうかに関しては明らかでない.糖尿病に合併する拡張機能障害に関しては不可逆的な部分もあると考えられ,高血圧と同様に,早期の介入が有効であると考えられる.また,虚血性心疾患や心不全発症リスクを下げるという意味でも,適切な糖尿病コントロールが重要である.心房細動? 拡張不全における心房細動の合併率は30~50%と高い.拡張不全患者が心房細動になると,心房収縮が消失し,心拍出量の低下ならびに頻脈により拡張時間が短縮し,心不全発症のトリガーとなる.心房細動を合併する拡張不全患者には,β遮断薬によるレートコントロールが有用である.また,症例によってはカテーテルアブレーションやアミオダロンなどで洞調律を維持することが拡張不全患者の心不全予防に有効である.肥満? 肥満は心負荷の増大から拡張障害につながるというだけでなく,合併するインスリン抵抗性や睡眠時無呼吸症候群も病態形成に重要な役割を果たしている.若年者において肥満と拡張障害の相関が強くなることが報告されており,これは他のリスク因子の合併が少ないため,肥満の影響が大きくなりやすいものと考えられている.肥満に対する介入として,運動療法の有効性がいくつかの論文で報告されており,拡張機能の改善につながるとともに,心不全患者のQOL も改善することが示唆される.睡眠時無呼吸症候群? 睡眠時無呼吸症候群と拡張障害に関しても報告が多く,とくに肥満や高血圧症例において睡眠時無呼吸症候群の合併の可能性を常に考える必要がある.持続式陽圧呼吸療法は拡張機能を改善するという報告もあり,早期介入が有用である可能性が高い.冠動脈疾患? 心筋虚血が拡張障害の原因となり,拡張障害の合併が予後不良因子であるとされている.積極的な血行再建が拡張障害の改善につながることが知られている.(田中秀和)文 献1) Cleland JG, et al.: Eur Heart J, 27: 2338-2345, 2006.2) Yusuf S, et al.: Lancet, 362: 777-781, 2003.3) Massie BM, et al.: N Engl J Med, 359: 2456-2467, 2008.4) Yamamoto K, et al.: Eur J Heart Fail, 15: 110-118, 2013.5) Dobre D, et al.: Eur J Heart Fail, 9: 280-286, 2007.6) Edelmann F, et al.: JAMA, 309: 781-791, 2013.7) Pitt B, et al.: N Engl J Med, 370: 1383-1392, 2014.