ブックタイトル循環器診療のロジック

ページ
8/12

このページは 循環器診療のロジック の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

循環器診療のロジック

この時点でどのような疾患の可能性を考えるか?1.前医の心電図で心房細動を認めており,心房細動に対する治療のみで症状は改善する2.労作時息切れを認めており,心房細動以外の心疾患の鑑別診断を考える3.抑うつ傾向の訴えが多く,うつ病に伴う症状である4.右軸偏位や右脚ブロックを認めており,右心負荷をきたす疾患を考える 易疲労感と労作時息切れを主訴とする若い男性である.心疾患は高齢者に多いイメージがあるが,若年でも成人先天性心疾患,肺塞栓(深部静脈血栓症),気胸,心筋炎,心筋症…,などが見つかることも多く,注意深い診察が必要である.前医の心電図では,心房細動,右軸偏位,完全右脚ブロックを認めている.孤発性に心房細動が起こる場合もあるが,何か原疾患に伴うことも多いので,心房細動の診断をして安心してはいけない.別の原疾患がないか,注意深く問診と診察をするべきである(実際,初診で異常がないと言われた若い患者は,医師にそう言われた,ということでその後も異常はないと思い込むため,自覚症状があっても受診につながらず,疾患の発見が遅れる例を多々経験する). 右軸偏位や右脚ブロックは健診でみかける心電図である.無症状で発見した場合でも,一度は心臓超音波検査(心エコー検査)で心疾患の原因検索を行う必要がある.とくに先天性心疾患では生まれつきその疾患をもっているため,患者が現在の状態に慣れてしまっていることが多Question 1症 例 29歳男性主 訴易疲労感,労作時息切れ現病歴 職場の健康診断にて心電図異常を指摘されていたが未受診だった.2 年前から仕事での易疲労感や抑うつ傾向を自覚していたが, 多忙や睡眠不足が原因と自己判断していた. 産業医に相談したところ,うつ病との診断で抗うつ剤と睡眠薬を処方され,一時的に症状は改善した.ところが,1 週間前より通勤時の階段で以前には感じていなかった息切れを自覚するようになり,精査目的で当院を受診した.既往歴・生活歴特記すべき既往歴や家族歴はない.喫煙歴は,5 本/日を7 年間吸っていたが,息切れがするようになってから禁煙している.身体所見身長162 cm,59 kg の中肉中背で,スーツ姿で受診し,やつれて疲れている印象を受けた. 血圧112/76 mmHg, 心拍90/分, 呼吸数14 回/分,SpO2 93 %(room air). 両側肺呼吸音異常なし. 心雑音の聴取を試みたところ, 雑音が聞こえるが, よくわからない. 下腿浮腫なし.健診の心電図では心拍90/分の心房細動,右軸偏位,完全右脚ブロックを認めている.29. 心房中隔欠損症 20529. 心房中隔欠損症Category Ⅷ.先天性心疾患