ブックタイトルお母さんのアレルギー診療と子どもの発症予防

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概要

お母さんのアレルギー診療と子どもの発症予防

145IV 各論 アレルギー疾患の発症・予防B.生活環境などとアレルギー発症・予防1 スキンケア・環境中の食物抗原1.感作経路としての皮膚 いつどこで,どうしてアレルゲンに感作されるのか? その問いに対する完全な答えはいまだ存在せず,また答えが1 つとも限らないだろう.かつては食物アレルギーの予防戦略として,妊娠中や乳児期における経口的な曝露を避けることにより発症を予防しようとする試みに焦点が当てられる時代があった.しかし 2003 年,Lack ら62)による出生コホート研究においてピーナッツアレルギーと湿疹が正相関し,特に皮膚炎が重症であることやピーナッツオイルを含むスキンケアを行うことがそのリスクであると報告され,これらの観察研究から経皮的な感作ルートの存在が示唆された.さらに2008年には Du Toitら63)により,乳児期にピーナッツを摂取することが少ない英国では,8 割以上が乳児期から摂取するイスラエルと比較し,ピーナッツアレルギーの発症率が約10 倍高いことが報告され,“Dual?allergen exposurehypothesis”の概念が発表された64).これら仮説の登場と同じくして,フィラグリン遺伝子(FLG)変異を代表とするバリア機能が破壊された皮膚からの経皮的な感作が注目される時代が到来した.Brownらは症例対照研究65)から,FLG 変異を有する場合,負荷試験で診断されるピーナッツアレルギーの発症率は,オッズ比 5.3 で有意に増加すると報告している. このように近年,感作といえば経皮感作を指すほど,盛んに経皮感作が議論される時代となった.表皮の角層は外界に対するバリア機能,つまり内側からの水分蒸発を阻止(inside?outside barrier)するとともに,外界からのダニや花粉などの侵入を防ぐ(outside?inside barrier)といった,物理的バリアとしての機能を発揮していることが知られ,さらに近年,角層下部に存在する細胞の間では,細胞間接着構造であるタイトジャンクションが形成さ