ブックタイトルお母さんのアレルギー診療と子どもの発症予防

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概要

お母さんのアレルギー診療と子どもの発症予防

121IV 各論 アレルギー疾患の発症・予防アレルゲンとなりうる食物の妊娠中・授乳中の制限 ここでは最近の2 つのシステマティックレビューの結果を紹介する.長くCochrane review を発表してきたKramer とKakuma は,2014 年に妊娠中・授乳中の母体の食物除去と児のアレルギーの関連についてシステマティックレビューを行っている2).彼らは,ランダム化の方法の記載が不十分であったり脱落率の高い論文を除くなど,厳密に論文を選択して,5 つの論文を解析対象とした.アレルギー家族歴のある母体の妊娠中の食事制限が乳幼児期のアトピー性皮膚炎atopic dermatitis(AD)に与える影響については,2 つの論文のデータを解析して介入群と対照群に差を認めていない(図 19).同様に生後18ヵ月までの喘息発症率にも両群に差はなかった(図 20).また,生後6 ヵ月における鶏卵および牛乳に対する感作も両群に差を認めなかった(図 21,22).さらに授乳中の母体の食事制限もアレルギー発症・感作に影響していなかった. Netting らは,妊娠中・授乳中の母体の食事に関連する観察・介入研究についての文献調査を行い,11 の介入研究,31 の観察研究,合計42 の報告を解析している3).母体の食事制限を行った介入試験では児の AD および気管支喘息発症に対する効果は認められなかった(図23,24).一方,アレルゲン感作については母体の多種類のアレルゲン制限は感作の低下と関連していた(図 25).ただし,これらの介入は一定の方法にのっとっておらず,同一の研究での異なる年齢での解析結果も対象となっている.図 25 で解析されている多くの介入研究はKramer とKakuma によるシステマティックレビューでは,脱落率の高さや食物以外の介入が行われていることから解析対象から除外されている.すなわち,システマティックレビューについては,解析対象となる研究の選択が極めて大きな影響をもつことがわかる.しかし,これら2 つの2014 年のシステマティックレビューは,共に母体の食事制限は児のAD と気管支喘息の予防に有効ではないことを示しており,母体の食事制限を推奨しないエビデンスレベルは高いと考えられる.食事制限により母体と児は有害な栄養障害をきたす恐れがある4).