ブックタイトル日本の循環器診療 現場〈リアル〉への招待
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日本の循環器診療 現場〈リアル〉への招待
Shinken Database とは何か? 3対する大規模な研究所を設け,大いに成果をあげているのであるが,わが国にあっては,ただ今のところこれを専門対象とする研究機関の見るべきものが殆どないのは残念であり,かつ憂うべきことといわねばならない. かような実情にかんがみ,第一生命保険相互会社は,ここに剰余金の中から拠出して,循環器系疾患に関する専門研究機関として,財団法人心臓血管研究所を設立することを発起した次第である. このように,心臓血管研究所は各種循環器疾患についての医学的研究を行い,その予防,診断,治療に資することを目的として設立されましたが,その大きな特色は,研究所に付属病院を併設したうえで,研究と臨床を表裏一体化して運営するという理念です.医学,医療の進歩に伴い,ややもすれば研究と臨床が分離してしまう傾向にありますが,心臓血管研究所が現在でも研究・臨床部門を分離することなく一体的に運営しているのは,この設立当時からの理念によるものです. 私はもちろんこの当時のことは知りませんが,2011 年に心臓血管研究所所長兼付属病院院長という大役を仰せつかることになった際,当時のことを知ろうと「財団法人心臓血管研究所30 年史」という記録集を入手しました.発足当時,虚血性心疾患,心電図,不整脈に関する臨床研究,動物実験が活発に行われていたことを示す文章と,その時代の業績が記載されていました.そのほかに「臨床研究,動物実験と並んで疫学調査も創設時の大きな研究分野であった.第一生命および埼玉県行田保険所の協力を得て,埼玉県北埼玉郡千代田村住民40 歳以上2,200 名を対象に10 年間実施された疫学研究は公衆衛生方面から高く評価された」とあり,Epidemiologic studies on hypertension and coronary heart disease in a Japaneserural population. Ⅰ.A study of blood pressure in Chiyoda(Jpn Heart J, 3: 544-554, 1962) Ⅱ. A study of serum cholesterol level in Chiyoda(Jpn Heart J, 4: 323-332,1963) Ⅲ.Electrocardiographic findings in Chiyoda(Jpn Heart J, 5: 37-48, 1964)という3 編の英文原著論文が記載されていました. この3 本の論文発表後,千代田村住民を対象とした研究は自然消滅してしまったようですが,疫学研究は心臓血管研究所設立当時からのひとつの研究テーマでした.その意味で,Shinken Database は,後世このような歴史を知らない者たちの手によって,違ったかたちでリバイバルしたひとつの疫学研究といえるかもしれません. では,どのようにして歴史を知らない者たちが,結果的にこの疫学研究をリバイバルさせることになったのか,そのいきさつを述べておきましょう. 私は,東京大学医学部附属病院に在籍中,おもに不整脈を対象とした臨床業務を行いな