ブックタイトル日本の循環器診療 現場〈リアル〉への招待
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日本の循環器診療 現場〈リアル〉への招待
16.obesity paradox は日本人のPCI 患者にも当てはまる? 69IntroductionchArrhythmia CAD Heart Failureobesity paradox とは 肥満は一般的に心血管疾患のリスク因子であり,肥満であるほど心血管疾患保有率が高まり,予後も不良であろうと予測されます.しかし一方で,心血管疾患保有患者の予後においては肥満がむしろ保護的な効果を有するのではないかという報告が多数あり,これをobesity paradox とよんでいます.実際,Framingham 研究では,BMI が増加するに従って高血圧,冠動脈疾患,および心血管疾患は増加しましたが,心血管疾患による死亡率は上昇していませんでした1).経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行患者においても肥満の保護的効果があるのではないかという報告が海外を中心になされています.海外の報告からみるobesity paradox 欧米では,PCI 後のobesity paradox について,2000 年代を中心に報告が散見されます2 ?4).これらの報告においては,BMI 25 以上の患者が73 ?80%,BMI 30 以上でも30 ?33%と肥満者の割合が圧倒的に多く,わが国とは肥満の程度が違うということをまず認識する必要があります.BMI が高いほど平均年齢は低下し,高血圧,糖尿病,脂質異常症というリスク因子の有病率は上昇します.PCI の成功率などに有意差はありませんが,PCI 後1 年までの死亡率は,BMI 25 以上の過体重から肥満患者の方が低いというのが共通する結果でした(図16-1).細かくBMI 値で分けてみていくと,とくにリスクが高いのは最もBMI が低い患者群ということは一貫しており(図16-2),BMI が高値であることに関しては40 以上という極端なレベルになって初めて死亡率が上昇するという報告がありますが,この点は賛否両論のようです.obesity paradox のメカニズムはわかっていませんが,痩せの患者では心疾患以外の潜在性の疾患,細い血管径による穿刺部合併症や,小さい体格ゆえの抗血小板薬の過剰な効果などが予後に関係しているのではないかと考えられています.ただ先に述べたように,海外では割合的に過体重の患者が一般的で,痩せの患者というのはわが国と比較して非常に少なく,特殊な患者層をみている可能性はあります.Shinken Database でみるPCI 患者とBMI Shinken Database に登録されている,2004 年6 月から2014 年3 月に初回PCI を施行した患者を,BMI 値が20 未満,20 ?24.9,25 ?29.9,30 以上の4 群に分けて予後を調査しました.BMI 25 以上の患者は38.6%と海外のデータの約半数程度で,30 以上obesity paradox は16 日本人のPCI 患者にも当てはまる?