ブックタイトル多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア

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概要

多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア

1155 不 安 本症例のように患者が抱えている漠然とした不安・恐怖を介入対象とすると,改善に不必要な時間を要したり,介入効果に乏しい結果となってしまう.まずは,患者の感じている不安・恐怖をできるだけ細かく丁寧に分解し,個々の不安・恐怖の原因や程度,それらへの対処法を十分に検討することが重要である.そのためには,多職種連携の力は不可欠である.日常生活・身体疾患治療への影響を評価し,精神科・心療内科へのコンサルテーションを検討する 精神的な不調は,健常者にも日常的に存在しているが,もちろん医学的治療の対象ではない.では,精神的な不調が治療・介入対象となる分岐点は何だろうか?その目安の一つが「日常生活や身体疾患治療への影響」である. 本症例の不安・恐怖は,その頻度,重症度,発現状況などによっては不安障害,適応障害,PTSDといった精神疾患/ 精神障害と診断される可能性がある.例えば,透析室に行けなくなることで慢性腎不全の状態悪化に歯止めがかからず生命の危険がある場合,精神科医によって精神疾患/ 精神障害と診断され,高強度の精神医学的な治療が必要となる.また,上記ほど緊急性が高くない場合でも,治療が進まず退院の見通しが立たないなどの場合も,治療・介入の対象になると考える. 医療スタッフによる治療・介入の必要がない「日常的にある精神的不調」と,治療・介入の必要がある「精神疾患/ 精神障害」の境目を考える上で,この日常生活や身体疾患治療への影響をひとつの目安にしていただきたい.そして,精神科・心療内科などへコンサルテーションする場合には,現在の精神症状に加えて,それが「生活や治療にどのような影響があるか」も合わせて伝達していただきたい.(庵地 雄太)参考文献・ 樋口輝彦監:内科患者のメンタルケアアプローチ 循環器疾患編.新興医学出版社,2013.