ブックタイトル多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア
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多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア
監修のことば 国立循環器病研究センターには,心臓移植や補助人工心臓などの高度医療を必要とする多くの症例が全国より紹介される一方で,年齢や合併症などの問題からこうした高度医療の適応とならず,心不全急性増悪による入退院を繰り返す高齢患者が年々増加している.心不全症状そのものは,急性期治療によって速やかに改善することから,患者にとっても医療者にとっても,悪化した際には再度入院すれば良いと考えられる傾向にあり,終末期を含めた将来の状態の変化に備えるためのアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning; ACP)といわれるプロセスがほとんど普及していない.そのため,本当の終末期に至った際に,患者・家族も本来望まなかった侵襲的治療が施され,患者本人ばかりでなく,残された家族にとっても不幸な結果となり,懸命な治療を行った医療者に対しても精神的な負担を強いることになってしまう. 循環器病の征圧を目指してきた国立循環器病研究センターとしては,最期まであきらめないのが基本的な立場であり,患者に対して蘇生のための処置を試みない(Do NotAttempt Resuscitation; DNAR)という判断を下すには,病院幹部と医療安全管理者などから構成される重症例検討チームによる承認を得るのが病院内の規則となっている.一方で,現場の医師にアンケートを行うと,9 割以上の医師が循環器領域においても緩和ケアが必要と感じており,循環器治療のみで改善できない呼吸困難や倦怠感,不安や抑うつに対してどのように対応すべきか,また治療の差し控えなどに関する倫理的問題をどう解決すべきか多くの医師が悩んでいる現状が明らかになった. そこで,2013 年9 月より国内初の循環器疾患に特化した多職種協働の緩和ケアチーム活動が開始された.主治医チームからのさまざまなコンサルテーションに対応するとともに,緩和ケアやACPの普及・啓発のための院内講習会や患者向けの配布資料作成,オピオイドの使用に対する説明同意書の整備に加え,地域医師会などと連携した院外講演会の開催などを行っている.超高齢化社会を迎え,心不全患者は年々増加しており,今後は病院に収容困難になる可能性も指摘されている.また,たとえ入院加療により症状の改善が得られても,退院後に生活管理を含めた十分なサポートがなければ,早晩入院を繰り返すことになってしまう.多職種協働緩和ケアチームは,こうした問題を解決する上でも重要な役割を果たすことが可能と考えられる.本書においては,当センター緩和ケアチームメンバーが中心となって,症例カンファレンスなどの具体的事例も含め,現在,われわれが行うことのできる心不全に対する緩和ケアに関して,即実践で活用できるように記載されている.臨床の現場で悩まれている医療スタッフの皆様の一助となり,本領域の発展に少しでも寄与できれば幸いである. 2017年3 月安斉 俊久