ブックタイトル多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア
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多職種カンファレンスで考える心不全緩和ケア
31 心不全緩和ケアとチーム医療能が低下することが多い.状態が悪くなり入院しても,いったん低下した身体機能が改善することも多い.しかし,最期は比較的急速に死を迎える(図1-1)2).予後の予測が困難であり,一度悪化した病態が治療により回復し,それに付随して劇的に身体機能が改善しQOLも向上する.治療そのものが緩和ケアであるという側面を持つのである. 次に,心不全では末期~終末期になっても機械的循環補助や心臓移植などの積極的治療で改善する選択肢が残されることが特徴である3).一方で,積極的治療が必ずしも良い結果を導くとは限らず,結果的に患者の苦痛を増大しQOLを低下させる場合も少なくないため選択が難しい.「緩和」というと症状を和らげるだけの後向き治療のイメージがあるが,緩和ケアを実践しながら,同時に積極的治療のオプションを視野に入れて診療にあたる必要がある.つまり,積極的治療と緩和ケアを並行して進めるバランス感覚が重要である. さらに,心不全がどの時点で末期状態に入ったかを判断することが困難なことが多い.ステージDで表される末期心不全とは,「適切な治療を実施していながら再発する,治療抵抗性で,慢性的にNYHA分類Ⅲ~Ⅳ度の症状を呈する状態」と定義されるが4),曖昧な部分が存在することと,寛解増悪を繰り返す心不全の連続性から,末期心不全か否かの判断を迷う場合も多い.医療者から患者側への説明が不十分になりがちで,認識が甘いまま末期心不全状態となるケースも多く見受けられることが課題である. これら心不全特有の症状経過を理解し,心不全自体の治療と並行しながら症状緩和を目指し,全体としての治療を選択していく意識とスキルが,心不全患者のQOLを高めるために今後不可欠である.心不全緩和ケアにおけるチーム医療の必要性 いかなる医療も一個人の努力だけではうまく進まない.医療は人間が人間を対象に展開する行為なので,提供する側の助け合いが必要だからである.特に緩和ケアは,患者のトータルペイン(全人的な苦痛)に対応するため,さまざまなスキルを必要とする.全人的とは,身体的苦図1-1 がんと心不全の終末期に至る過程(文献2より引用)高低死時 間a が ん体調・ADL1~2ヵ月で急速に低下b 心不全高低死数年の経過だが,最期は急速に低下時 間体調・ADL入院