ブックタイトルフォーカス!最後の心房細動診療

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概要

フォーカス!最後の心房細動診療

2 心房細動について,さまざまな角度から活発な議論がされるようになりました.電気生理学的な視点からだけではなく,循環器内科,脳卒中予防,一般内科あるいは総合診療としての立場からなど,その議論は複眼的な様相を呈しています.心房細動は「心電図」上,ひとつの表現型にすぎません.しかし,「患者」という人を診たとき,それは千差万別です.だから,心房細動がさまざまなかたちに見えるのは当然です.立場によって異なるそれぞれの見えかた,どれもが正しいからこそ,診療の大きな目標のひとつは,個別の患者自身やその家族が感じる満足,幸福や安心などに求められるべきだと思います. そう考えながら日々多様な情報に接しているなかで,ある日,ひとつの図を見て衝撃を受けました.普段なら「そんなものだろうな」と見過ごしてしまったかもしれません.その日は少し気分が違っていたのでしょう.それは,厚生労働省が毎年発表している人口動態調査のなかにある図でした. 超高齢化が進行するとともに,死亡数が毎年増加し,すでに出生数を超えていることは誰もが知っています.この図から,日本の年間死亡数は1966 年が最低で,その後,単調に毎年増加し,現在では大正期に生じた関東大震災時並みの死亡数になっていることもわかります.死亡時の年齢に注目すると,関東大震災時には64 歳以下がほとんどでしたが,現在は80 歳以上が過半数を占めています.このように,年齢が大きく異なるので,死亡数の大小を論じることにはあまり意味がありません.しかし,高齢者が増加している以上,日本の死亡数の増加は避けがたいことをこの図は示しています.そのため,国は医療政策の転換を求められているほどです.高齢化が心房細動にやってきた