ブックタイトル臨床神経内科学 改訂6版
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臨床神経内科学 改訂6版
きにどのようになっているかが想像でしかないときに考えることと,実際になったときに考えることは必ずしも同じではないため,進行に則して再確認していく必要がある.b.対象疾患 1.筋萎縮性側索硬化症 (amyotrophic lateralsclerosis;ALS) ALS は比較的短期間に進行し,さまざまな苦痛を生じる.告知時や進行期において疾患の受容に対する困難,流涎,むせこみ・窒息,呼吸苦(50%),疼痛(40~73%),せん妄,コミュニケーションが取れない状況となることによる精神的およびスピリチュアルな苦痛などもあり,そのそれぞれに対応が必要である. また,さまざまな医療処置を選択するかどうかも予後を左右するだけでなく,介入後のQOL にも大きく関わるため,意思決定支援が重要である.2.Parkinson 病およびParkinson 症候群(PSP,CBD,MSA 等) まずはQOL を保つためには必要十分な治療が行われることが第一である.Parkinson 症候群であっても抗Parkinson 病薬を比較的多量に用いることによって,ある程度有効な場合もあるので,少しでもQOL を改善できないか試してみるとよい. 進行期になると副作用の問題などからそれ以上の薬剤のコントロールが難しくなることがある.動きが悪くなると拘縮をきたしやすくなり,褥瘡など疼痛が問題となる.嚥下障害が進行すればむせこみ・窒息が問題となり,重度感染症では呼吸苦もきたしうる.投薬の影響もあり,せん妄状態にもなりやすい.診断告知や認知機能低下に対するスピリチュアルペインも問題となりうる.また,Parkinson 病の約10%は遺伝性であり,遺伝にまつわる苦悩も生じうる.3.多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)・視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO) 発症が若年のことが多く,いつ再発するかわからないという不安や,障害される部位によってさまざまな苦痛症状を生じうる.特に痙性による疼痛や感覚障害によるしびれ,三叉神経痛などの痛みの対処に困窮することがある.視神経障害をきたしやすいため,視力低下に伴うスピリチュアルペインをきたしうる.脊髄病変がある場合など排尿障害もきたしやすく,著しくQOL を阻害する.倦怠感,易疲労性があることも特徴である.若い世代が多いため,経済的問題や療養場所の選択に窮することも多い.4.認知症 Alzheimer 型認知症は診断されてから死亡までは10 年程度といわれており,診断した時点で生命を脅かす疾患となる.他の認知機能障害をきたす病態と同様に,医療処置の意思決定支援など病初期から意識して行う必要がある.5.Huntington 舞踏病 多くは壮年期に発症し進行性に舞踏運動などの不随意運動と精神症状を伴い認知機能低下が進行する疾患である.頻度の低い疾患ではあるが,常染色体優性遺伝形式をとり,浸透率も高いため,ほぼ1/2 の確立で遺伝する.発症した親をat risk の子供が介護するということになるため,発症前診断などの問題も起こりうる.小児発症例などParkinsonism や失調症状が前景に立つ例もある.不随意運動に対しては,最近テトラベナジンがわが国で認可され使用可能である.根本療法は難しく,自殺者も多い疾患であるため,スピリチュアルペインへの対応,家族への対応なども必要である.6.歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentato-rubro-pallido luysian atrophy)DRPLA 常染色体優性遺伝形式をとり,表現型はさまざまであるが,舞踏運動などの不随意運動やてんかんをきたし,精神症状を伴う認知機能障害を伴う点でHuntington 舞踏病と同様の問題を生じる.7.筋ジストロフィー 小児期から発症する進行性筋ジストロフィーと成人になってから発症する肢体型ジストロフィー,筋強直性ジストロフィーなどが含まれる. 進行性筋ジストロフィーはほとんどが小児発2 神経内科特殊治療?897