ブックタイトル臨床神経内科学 改訂6版
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臨床神経内科学 改訂6版
副腎皮質ステロイド,IVIg,血漿浄化療法などの報告があるが,確立したものはまだない.3 炎症性の末梢神経疾患inflammatory peripheral neuropathy血管炎vasculitisA【概説】 血管炎は,自己免疫的機序により血管に炎症をきたす疾患群の総称であり,さまざまな疾患と関連している(表Ⅳ-12-1).血管炎に伴う神経障害は高頻度に認められ,中でも末梢神経障害(ニューロパチー)は日常診療の中で遭遇する機会が多い.例えば,顕微鏡的多発血管炎では全体の60%程度にニューロパチーを認める.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosirnophilicgranulomatosis with polyangiitis;EGPA)(Churg-Strauss 症候群)では,気管支喘息以外では,ニューロパチーの頻度が最も高く,全体の80%程度に認める.一方,多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis;GPA)(Wegener 肉芽腫症)においては,文献にもよるが,ニューロパチーの出現頻度は比較的低く,多数例での検討では15%と報告されている.これらの,いわゆる全身性の血管炎以外に,末梢神経系のみが障害されるnonsystemic vasculitic neuropathy も多くみられる.a.症状・経過・予後 ニューロパチーは血管炎の局所性を反映して多発性単ニューロパチーを呈するが,特に症状が進行した場合は,一見,多発ニューロパチー様の病型を呈する場合もあり,注意を要する.障害は下肢優位,遠位優位で,痛みを伴うことが多い点が一般的な血管炎に伴うニューロパチーの特徴である.血管炎によるニューロパチーは,顕微鏡的多発血管炎やEGPA の頻度が高いが,末梢神経系のみが障害されるnonsystemicvasculitic neuropathy も多くみられる.nonsystemic vasculitic neuropathy は血管炎による障害が末梢神経系のみに限られ,腎臓,皮膚,肺などの他臓器は障害されない疾患であり,ANCA(anti-neutrophil cytoplasmic antibody;抗好中球細胞質抗体)は陰性である.病理学的には末梢神経系に分布する小血管に血管炎を認め,全身性血管炎に比べて生命予後は良好であるといわれている.b.病因・病態・病理 顕微鏡的多発血管炎,EGPA,およびGPAにおいては,血清中にANCA が検出され,その発症機序に関わると考えられており,ANCA関連血管炎として総称されている.ANCA 関連血管炎は小血管中心の血管炎であり,神経系にも高頻度に障害をきたす. 血管炎の病理像は病期により異なり,活動期12 末梢性神経疾患?531表Ⅳ-12-1 末梢神経障害をきたす主な血管炎関連疾患A.全身性血管炎原発性I .小血管炎 1.顕微鏡的多発血管炎 2. 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss 症候群) 3.多発血管炎性肉芽腫症(Wegener 肉芽腫症) 4.Henoch-Schonlein 紫斑病 5.本態性混合型クリオグロブリン血症Ⅱ.中血管炎 1.結節性多発性動脈炎Ⅲ.大血管炎 1.巨細胞性動脈炎続発性 1.慢性関節リウマチ 2.全身性エリテマトーデス 3.Sjogren 症候群 4.強皮症 5.皮膚筋炎 6.混合型結合組織病 7.Behcet 病 8.サルコイドーシス 9.炎症性腸疾患 10.悪性腫瘍 11. 感染症(HBV, HCV, HTLV-1, HIV, CMV, ハンセン病,ライム病など) 12.薬剤性 13.低補体蕁麻疹様血管炎B.非全身性血管炎 1.nonsystemic vasculitic neuropathy 2.糖尿病性腰仙部根神経叢神経障害HBV:B 型肝炎ウイルス HCV:C 型肝炎ウイルス HTLV-1:ヒトT リンパ球向性ウイルス1 型 HIV:ヒト免疫不全ウイルス CMV:サイトメガロウイルス