ブックタイトル臨床神経内科学 改訂6版
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臨床神経内科学 改訂6版
それに応じた管理が必要である.500 mg/dL以上では呼吸筋麻痺となり,挿管による呼吸管理が極めて重要になり,電解質,体液バランスの維持も重要である. 血中濃度が500 mg/dL,アシドーシス状態では人工透析の適応である2).救急勤務でしばしば騒乱状態の患者に遭遇するが,重症度を迅速に判定し,治療方針を決定することが重要である(表Ⅳ-18-3).2 病的酩酊状態 (pathological intoxicationstates) アルコールにはさまざまな飲酒誘発性障害がある(DSM-IV 291.1-291.9).病的酩酊は異常な興奮,反社会的,暴力的破壊的行為をし,覚醒後はその記憶がない状態をいう.素因,脳障害歴が関係するといわれ,比較的少量の飲酒でも惹起されることがある,法医学的問題を内在した状態である.一過性記憶喪失は深酒の翌日,その記憶が途絶えている状態であるが,その時は必ずしも高度の酩酊状態ではない.時にアルコール症の初期にも観察される.アルコール禁断・離脱症候群(DSM-IV 291.8)alcohol withdrawal syndrome, alcohol abstinencesyndromeB これはアルコール依存者にのみ認められる症状である(図Ⅳ-18-2).本症の機序の一部はグルタミン酸受容体の調節能亢進とGABA 受容体の調節能低下によると想定される.1 アルコール振戦 (alcoholic tremor) アルコール離脱後数時間から出現し,数日間持続し比較的早い,不規則,微細な振戦である.時にミオクローヌス様の粗大な振戦のこともある.一定の姿勢あるいは活動時に出現する.静止時には明らかでない.基本的に興奮,緊張時表Ⅳ-18-2 血中アルコール濃度と臨床症状血中濃度区 分臨床症状0.02 ~ 0.04% 微酔爽快期気分さわやか活発な態度をとる0.05 ~ 0.1% ほろ酔い初期ほろ酔い気分脈拍・呼吸数早くなる,話し滑らか,抑制解除0.11 ~ 0.15% ほろ酔い極期気が大きくなり,自己抑制がとれる.立てば少しふらつく0.16 ~ 0.30% 酩酊極期運動障害が出現,まともに歩けない(千鳥足)呼吸促迫,嘔気,嘔吐,低血圧,低体温0.31 ~ 0.40% 泥酔期歩行困難,転倒すると起き上がれない意識混濁,言語支離滅裂,瞳孔散大0.41 ~ 0.50% 昏睡期昏睡,糞尿失禁呼吸麻痺をきたし死亡する危険大表Ⅳ-18-3 急性アルコール中毒の治療A.興奮,暴力的状態1.静かな環境に隔離し,安心させる2.呼吸抑制のリスクがあるので,鎮静剤投与は避ける3.十分なバイタルなどの観察を行うB.昏睡・昏迷状態1.呼吸抑制がある場合:気道の確保,ICU などで人工呼吸器管理2.輸液路の確保;低血糖が疑わしいとき:thiamine150 ~ 300 mg とともに,50%ブドウ糖40 mL 静注3.バイタルの注意深い管理:脱水,アシドーシスの補正4.無呼吸,深昏睡の場合: 血液透析を考慮する(血中濃度500 mg/dL 以上)5.中枢性興奮薬の投与,胃洗浄は行わない(摂取1 時間以上経過では効果なし,誤嚥の可能性高い)6.アルコール以外で意識障害をきたす原因を考慮,頭部外傷も鑑別する18 外因性中毒性疾患?621