ブックタイトルベッドサイドの神経の診かた 改訂18版

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概要

ベッドサイドの神経の診かた 改訂18版

60なっているときには,両足を広く開き(wide based),歩くときには,足を急速に異常に高く持ち上げ,つぎにこれを投げ出すようにして,かかとを強く床にたたきつけるようにする(tabeticgait).歩行中眼はたえず床に注いでおり,眼を閉じさせると急に歩けなくなる.こういう患者は,暗がりでは歩行障害が著明になるので,暗がりでは,廊下もうまく歩けないと訴える. 小脳疾患,前庭神経障害での歩行はやはり両足を開き,酔っぱらいのようで,全身性の動揺が強い.小脳半球障害では障害側に倒れやすい.このような歩行異常は運動失調,平衡障害によるもので,閉眼しても増悪しない.小脳虫部の障害では四肢に運動失調がなくても,体幹運動失調truncal ataxia により起立,座位,歩行が侵される.運動失調性歩行を早期に発見するには,直線歩行,つぎ足歩行を検査するのがよい.酔っぱらいのような歩行は酩酊歩行drunken gait,またはよろめき歩行staggering gait とよぶ.4. 鶏 歩 Steppage Gait 垂れ足drop foot になっているときにはこれを代償するように足を異常に高く持ち上げ,つま先から投げ出すようにして歩く.一側のみであれば,健側に比べて障害側の足の挙上が目立ちわかりやすい.灰白脊髄炎(ポリオ),腓骨神経麻痺などでみられる.5. 動揺歩行 Waddling Gait 腰と上半身を左右に振って歩く.これは進行性筋ジストロフィーに特有な歩行である.腰帯筋が弱いために,一歩ごとに骨盤が傾くので起こる歩行異常である.6. パーキンソン歩行 Parkinsonian Gait これはパーキンソン病で,進行した時期にみられ,膝を曲げ,前かがみの姿勢で小刻みに歩く(図3-12).足はあまり床から上げず,手振りも少ない.歩き始めは第一歩を踏み出すのが困難で,数秒から数十秒足がすくむ.これをすくみ足歩行frozen gait という.パーキンソン病の歩行は最初は足の動きはゆっくりであるが,体が前方に傾くので,足は自分の重心を追いかけるように次第に速くなり,歩幅が段々に狭くなり,かけ足のようになる.これを加速歩行festinating gaitという.こうなると,止まれと命じても,すぐに停止することができずに, そのまま数歩前方に突進する. これを前方突進〔現象〕propulsion という.7. 小刻み歩行 Marche a Petits Pas〈F〉 高齢者にみられ,軽度の前屈姿勢をとり,ゆっくりと小刻みに足を地面の上をすべらせるようにして歩く.脳動脈硬化による多発性脳梗図3-12 パーキンソン歩行