ブックタイトル脳卒中病態学のススメ
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脳卒中病態学のススメ
- 231 -1 神経保護薬A 治療の理論急性期脳梗塞に対する血管内治療endovascular therapy(EVT)はその有効性が相次いで報告されており,特に主幹動脈閉塞患者に対してはt-PA 静注療法よりも優れた効果が示された 1, 2).しかしながら,その治療可能時間域therapeutic time window の制限により実際に血栓溶解療法やEVT を受けられる患者は少なく,治療を受けられたとしても恒常的に良好な結果を示せる患者は半数以下である 1, 2).急性期脳梗塞における脳保護療法の主な目的はペナンブラ(第Ⅲ部1 章 「局所脳虚血の病態」(p.42)参照)の領域を救うことである.この領域では,脳虚血により複雑なカスケードが生じて神経細胞死が誘導されているが,このカスケード内の多くの分子標的は薬理学的に制御されうる.つまり,適切な時間内に薬剤等で治療を行えば,虚血領域,特にペナンブラを救済することが可能となる.一方で,コアと呼ばれる虚血中心部においては,血栓溶解療法やEVT により早期の血流再開をはかることでしか神経細胞を救命し得ない(図Ⅲ-12-1).神経保護薬の分子標的となるのは,グルタミン酸放出,グルタミン酸受容体活性,興奮性細胞毒素,細胞内Ca2 +流入,ミトコンドリア障害,種々の細胞内酵素活性,フリーラジカル産生,一酸化窒素nitric oxide(NO)産生,神経細胞のアポトーシス,そして炎症である(図Ⅲ-12-2).前臨床試験では,これらを標的とした薬剤の脳保護効果やそのメカニズムを,動物モデルを用いて梗塞サイズや運動機能等により評価するが,これまでに多くの薬剤が脳保護効果を示している.しかしながら,急性期脳梗塞患者を対象としたランダム化比較試験randomized controlled tria(l RCT)の多くは,前臨床試験の結果に反して同薬剤の有効性を示すことに失敗してきた.これは前臨床試験と臨床試験と12 神経細胞保護療法Ischemic Core(虚血中心部)Ischemic CoreThrombolysis and/or EVTIschemic Penumbra(虚血辺縁部)Neuroprotectiontherapeutic time window図Ⅲ-12-1 虚血領域と治療