ブックタイトル脳卒中病態学のススメ
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脳卒中病態学のススメ
2 低体温療法 241虚血・再灌流モデルとしては,中大脳動脈血管内閉塞モデル(suture model)が使用されることが多いが,これらのモデルは一定時間の虚血後,塞栓糸等を引き抜くため100%の再灌流が得られる.しかし実際のヒトにおける臨床では,組織プラスミノゲンアクチベーターtissue plasminogenactivator(t-PA)を静脈注射した場合でも,再灌流する症例は32%,部分的に再灌流する症例は29%,再灌流しない症例は38%と報告され,再灌流率は必ずしも高くない 5).すなわち頻用される血管内閉塞モデルは実際の臨床を反映していない可能性がある.よって筆者らは,ヒトにおける臨床に近づけるため,中大脳動脈遠位部を永久閉塞した後,60分間の一過性の両側総頸動脈閉塞を組み合わせて行う部分的再灌流モデル *を使用している(図Ⅲ-12-4A) 6).KeyWord 部分的再灌流主要な血管が閉塞した際に,血液循環を維持するため通常と異なる血管の迂回路(側副血行路)を介して,部分的に血流が再開すること.② 深部体温の測り方直腸温と脳温は相関することが確認されている 7)ので,深部体温を直腸温で確認する.70%メタノールを霧吹きで全身に吹きかけて体温を下げる.体温の維持や復温は,ヒーティングパッドや白熱電球などのスイッチを適宜オン・オフして行う.C 動物モデルからわかった低体温療法の作用機序筆者らは前述の部分的再灌流モデルに対する低体温療法の有効性を検討した.具体的には両側総頸動脈閉塞開始から再灌流を行うまでの60分間に,30℃の虚血中低体温療法を行った(図Ⅲ-12-3B).この結果,虚血48時間後の脳梗塞面積が80%減少すること,さらにその効果は2ヵ月後にも認めら<28℃軽度低体温療法虚血AB再灌流26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37℃28-31.9℃32-35.9℃中等度低体温療法高度低体温療法虚血前+虚血中虚血中+虚血後虚血後虚血前+虚血中+虚血後虚血中図Ⅲ-12-3 低体温療法の分類A: 標的温度による分類.B: 開始時間による分類.