ブックタイトル脳卒中病態学のススメ

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概要

脳卒中病態学のススメ

248  12 神経細胞保護療法ロウイルスと異なり非分裂細胞にも感染することから,レンチウイルスの開発が進んだ.レンチウイルスは,AAVと異なって標的細胞の宿主ゲノムに組み込まれて発現するため,長期に安定した遺伝子発現が可能である.P2レベルで使用することができる.KeyWord レンチウイルスレンチウイルスも中枢神経への遺伝子導入に有用なベクターで,臨床試験にも使用されてきた実績がある.宿主ゲノムに取り込まれるため,長期の発現が期待できる.AAVに比較し,導入遺伝子のサイズが大きいという長所がある.Key Point● AAVやレンチウイルスは安全性が高く,中枢神経細胞への遺伝子導入で広く使われている.AAVはP1レベル,レンチウイルスはP2レベルで使用可能である.非分裂細胞においてはどちらも長期の発現が期待できる.C 脳卒中研究においてウイルスベクターが果たす役割脳卒中研究においてウイルスベクターを用いた際の長所は,長期の発現が期待でき,目的のタンパク質が継続的に合成される点である.筆者らの検討では,AAV 局所投与から15 年後のカニクイザルの被殻においても目的遺伝子の発現を認めた 3).一方で,ウイルスベクター投与から発現までに時間を要するため,神経保護因子発現ベクターを投与しても脳虚血の完成までに間に合わないという短所がある.この点をどう工夫するかが重要となる.表Ⅲ-12-5に示す通り,神経保護因子をあらかじめ遺伝子導入しておき,脳虚血における脳保護効果を確認する研究が,2000年頃からなされるようになった.全脳虚血モデルにおける報告では,Bcl-2 4)やapoptotic protease activating factor-1-interacting protein(AIP) 5)をウイルスベクターに乗せて海馬CA1 に直接投与し,5 日後に一過性全脳虚血手術を行ったところ遅発性ニューロン死が抑制されていた.局所虚血モデルでは,グリア細胞由来神経栄養因子glial cell line-derived neurotrophic図Ⅲ-12-7 4週齢のスナネズミ(オス)に1×10 10 vgのGFP発現AAV-rh10を海馬に直接投与した,3週後の冠状断(プロモーター:Synapsin-I)(A).4週齢のSprague-Dawleyラット(オス)に1×10 10 vgのGFP発現AAV-rh10を基底核に直接投与した,3週後の冠状断(プロモーター:CMV)(B).Scale bar:1 mmA B