ブックタイトル実践から識る!心不全緩和ケアチームの作り方

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概要

実践から識る!心不全緩和ケアチームの作り方

17はじめにわが国では,がん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画により緩和ケアの実践が重点目標とされ,がん領域を中心として緩和ケアが実践されてきた.一方で,心疾患は2014 年における死亡総数のうち,19 万6, 926 人と15. 5%を占めており,がんに次いで2 番目に多い疾患であるにも関わらず,その多くを占める心不全患者における緩和ケアは十分に実践されていないのが現状である.末期心不全患者の多くは,身体的症状,精神的症状などの問題を抱えており,緩和ケアの実践はがんと同様に重要であると考えられる.1─緩和ケアの対象は2002年に世界保健機構(WHO)は緩和ケアを以下のように定義している.「生命を脅かす疾患に関連する問題に直面している患者と家族の,痛みその他の身体的,心理社会的,スピリチュアルな問題を早期に同定し適切に評価し対応することを通して,苦痛 sufferingを予防し緩和することにより,患者と家族のQOL を改善する取り組みである」 1).緩和ケアの対象は,従来はがんをはじめとした積極的治療に反応しなくなった患者とその家族であるとされてきた.しかし,現在では,疾患の種類を問わないこと,病気の時期を問わず早期から予防的に関わることの重要性が提言されている.また,WHO は緩和ケアの理念と具体的な実践を次の9項目としてまとめている(表1-C-1).緩和ケアの目標は,あくまで患者とその家族のQOLの維持・向上であり,患者とその家族が医療従事者とともに治療やケアについて相談しながら,各自の人生を全うすることが目標になる.われわれ医療従事者は患者・家族の人生の一部をみているのに過ぎないことを忘れてはならない.また,心不全患者の家族はいずれ患者との死別を体験するが,大切な家族との死別は喪失を伴う重大で深刻な出来事であり,遺族のケアでは,家族の死に対して十分に悲しみ,その事実を認めて向き合い,自ら乗り越えていく作業を自然に行えるように支持的サポートを行う必要がある.しかし,遺族へのケアには,死別後にねぎらいの言葉をかけるよりも,療養中から患者・家族へのケアを十分に行うことが最も重要であると思われる.2─ 緩和ケアはどのように導入するべきか心不全患者やその家族には,どのように緩和ケアを提供するべきだろうか.海外のガイドラ緩和ケア医の立場からみた,C 心不全緩和ケアの役割とその対象