ブックタイトル実践から識る!心不全緩和ケアチームの作り方

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概要

実践から識る!心不全緩和ケアチームの作り方

78はじめに緩和ケアの目指すゴールは何だろうか? 全人的苦痛の緩和によるQOLの改善であることは,言うまでもない.しかし,対象である人間の苦痛のありようは多様であると同時に,難治性である場合が多い.さらに,その人にとって人生や生活において大切にしたい価値観は異なるため,症状緩和やQOL の改善のための目標には,個別性がある.したがって,緩和ケアのゴールは,患者の大切にしている価値観に基づく治療やケアに対する意向を共有し,その実現のために医療者と患者・家族が患者の最善の利益について合意形成していくプロセスであるととらえることができるのではないだろうか.人生の最終段階における医療に関する選択は,回復が見込めない中での選択を余儀なくされるため,合意形成のプロセスにおいて,医療者同士,患者・医療者,患者・家族間など関係者間でさまざまな価値の対立が起こり,葛藤や苦悩がつきまとい,意思決定に揺れる場合が多い.そのため,患者・家族と多職種チームが対話を基盤とした話し合いを継続的に行い,合意形成を行っていくことが重要となる.そこで,本項では,チームで実践する意思決定支援と合意形成のプロセスの意義と方法について,慢性心不全の特徴を含めて概説する.1─ 慢性心不全における意思決定支援の特徴とアドバンス・ケア・プランニングの意義慢性心不全の病みの軌跡は,増悪と寛解を繰り返しながら,最期は比較的急速であることが知られているが,急性増悪期のどこが最期のポイントであるか予測がつかないことが特徴である.最期に至るまでの経過は,心不全患者のほとんどは,不可逆的なポンプ不全により症状が増悪していくと考えられている 1)が,不整脈で急激に最期を迎える場合や併存疾患に伴い増悪する場合など,最期に至るまでの経過には個別性があり限界がある.そのため,医療者が終末期の病状説明のタイミングだと思った時点では,患者の苦痛が強いあるいは患者の意思決定能力が低下した状態となる場合が多く,患者の自律性を尊重した意思決定支援が難しいことも多く経験される.このような理由から慢性心不全における意思決定のアプローチとして,アドバンス・ケア・プランニング advance care planning(ACP)が推奨されている 2).ACP とは,将来の身体機能の低下や意思決定能力の低下を見据えて,前もって人生の最終段階における治療・ケア・療養A 意思決定支援と合意形成