ブックタイトル非がん性呼吸器疾患の緩和ケア
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非がん性呼吸器疾患の緩和ケア
168 A サポーティブケアの目的と意義慢性呼吸器疾患の患者は呼吸困難のため以前,難なくできていたことができなくなり,不安による換気デマンドの増加がさらに呼吸困難感を増長する.家族,友人,特に配偶者に内部障害である慢性呼吸不全の呼吸困難感が理解してもらえないと,大きなストレッサーとなる.COPD でのうつ発生率は,一般と比較して2. 5 倍も高く,心理的介入を含むプログラムは,運動のみよりも不安・うつ気分を改善し,心理カウンセリングは呼吸リハの処方されたうつや不安をもつ患者(20?40%の患者)に対しての効果を示唆した 1).さらにその配偶者もうつやストレスで苦しむことから,家族をも含んだケアが求められる.在宅酸素療法を開始すると生活様式の変更を余儀なくされ,酸素を携帯するためボディイメージが変化する.酸素を吸っている社会的・精神的・身体的煩わしさのため,社会的活動が著しく制限される(身体活動性の低下).閉じこもりがちになり,抑うつ気分はさらにADLを低下する.受診・入院の増加も家庭内の役割・社会的役割が低下する要因となる 2).慢性呼吸不全患者のトータルペインとして,身体的苦痛(痛み,息苦しさ,だるさ,薬による副作用,不眠など),精神的苦痛(死に対する不安,恐怖,苛立ち,孤独感,疑念,うつ状態),社会的苦痛(社会的地位や役割の喪失,収入など経済的問題,相続など家族内の問題など),霊的苦痛(後悔,自責の念,人生の意味,苦しみの意味,死生観に対する悩みなど)があげられる.これらを軽減するスピリチュアルケアが軽症の段階から求められる.運動すること,音楽を楽しむこと,想像力を働かせること,食事を楽しむことなどから遠ざかっていた患者に対して,手を差し伸べ,生きがいを取り戻すことから始め,信じる人々に命の終わりを託したい,と思われるようなチーム医療の構築が望まれる(図5-A-1).サポーティブケアは代替医学・医療とも呼ばれ,日本補完代替医療学会では,「現代西洋医学領域において,科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称」と定義されている.また,米国補完代替医療センターNational Center for Complementary AlternativeMedicine (NCCAM)では,「現段階では通常医療と見なされていない,様々な医学・健康管理システム,施術,生成物質など」とされ,年間約1 億ドル(約115 億円)の予算での研究が進行している.日本においても,2006年に厚生労働省がん研究助成にて,がんの補完代替医療ガイドブックが出版されている 3)代替療法を呼吸リハプログラムに含めることで,行動変容の継続に寄与し,呼吸リハビリの継続にも役立つ.リラクセーション・ヨガと瞑想・音楽療法・アロマテラピーなどが用いられる.また代替療法を行う環境下は,他の患者と交流する機会が多く,同様の症状5 呼吸不全のサポーティブケア