ブックタイトル非がん性呼吸器疾患の緩和ケア
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非がん性呼吸器疾患の緩和ケア
91A 終末期の包括的呼吸リハビリテーション(1)終末期の包括的呼吸リハビリテーションの目的と意義増悪の入院ごとに呼吸機能だけでなく全身の身体機能・精神的機能が低下し,終末期に向かっていく呼吸器疾患では,増悪の予防,呼吸困難の軽減,QOL の改善が重要である 1).日本では木田により1998 年に包括的呼吸リハビリテーションの概念が提唱され(図4-A-1),理学療法・運動療法・作業療法だけでなく,日常生活活動度をあげる社交活動の支援,酸素,吸入療法の指導,栄養指導,患者のセルフマネジメント能力を上げるための教育を合わせて行うことに多くの効果があると示された.呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の効果として,COPDについては,Global Initiativefor Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)ガイドライン2015に運動耐用能の改善,呼吸困難の軽減,健康関連QOLの向上,入院回数と日数の減少,不安・抑うつの軽減,増悪による入院後の回復についてエビデンスA として評価されている 1, 2).2013 年米国胸部学会American Thoracic Society(ATS)と欧州呼吸器学会EuropeanRespiratory Society(ERS)の呼吸リハに関する国際的ステートメントが改訂され 2),呼吸リハは「徹底した患者のアセスメントに基づいた包括的な医療介入に引き続いて,運動療法,教育,行動変容だけではなく,慢性呼吸器疾患患者の身体および心理的な状況を改善し,長期の健康増進に対する行動のアドヒアランスを促進するために患者個々の必要性に応じた治療が行われるものである」と新しく定義された.オーダーメイドの医療介入を行い,統合ケアintegrated care としての5層構造のモデルが示された(図4-A-2) 3).統合ケアは,増悪の予防に関するアクションプラン,患者教育,自己管理,呼吸リハが包括的かつ段階的になされ,患者・家族の評価にはじまり,患者教育,薬物療法,栄養指導,酸素療法,理学療法,作業療法,運動療法,社交活動などを含み,患者・家族に対して多次元的に多くの職域のチーム医療により行われる 4).増悪での入院が終末期への意思決定などに重要であるが,いきなりギアチェンジをして終末期の呼吸リハが始まるわけではなく,通常のチーム医療の延長上にシームレスな形として終末期の呼吸リハはなされるべきである.終末期に至る前に,呼吸法,息切れがしない動作の工夫,呼吸困難への対処方法,排痰手技などを体得しておくことが必要であり,少なくとも在宅酸素療法導入前に呼吸リハの開始が望まれる.患者が知りたいことや事前指示など終末期の問題について,呼吸リハ教室などにおいて,医療スタッフにより講義を行い,患者同士での話し合いをもつことも望まれる(図4-A-3).リハビリテーションはこれまで,社会復帰へ向けて身体機能が向上する見込みのある患4 症状緩和の方法