ブックタイトル非がん性呼吸器疾患の緩和ケア

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概要

非がん性呼吸器疾患の緩和ケア

104  4.症状緩和の方法看護師や家族など多くの人によって行うことは,患者の呼吸困難の軽減を図るために非常に有益であると考える.ただし,呼吸介助は,運動方向や圧迫力によっては肋骨骨折を起こすこともあるので十分に注意しなければならない.また,突然に呼吸困難が生じた時などに,原因がはっきりしないままでの呼吸介助は,予期せぬ呼吸停止などのリスクも否定できないため,施行の是非の判断も必要になることがあることも考慮しておくべきである.さらに,認知症患者においては,意思疎通が困難となり,身近な人の区別もできなくなることがあり,状況によっては呼吸介助を拒否したり,攻撃性がみられたりすることがある.このような場合でも,呼吸困難などの症状の観察と呼吸困難軽減のための介入は求められるが,呼吸介助を行う際には,心地よい環境を提供して声をかけることは,最後まで重要となる.徒手的に呼吸介助を行うことは,患者や家族の気持ちに寄り添い,患者の「つらさ」やそれをみている家族の「つらさ」を理解し,共有することにも繋がっていると考える.こうしたことが,患者や家族に最期をどのように過ごしたいのかを聴ける準備になると思われる.このような配慮は患者・家族には心強く感じられると信じている.文 献1) 神津玲:“呼吸介助法”.呼吸理学療法標準手技.千住秀明 ほか 監.医学書院,2008,92-95.2) 高橋仁美 ほか:呼吸介助手技の効果に関する検討.市立秋田総合病院医誌.1998;8:1-5.3) 佐野正明 ほか:正常な呼吸のメカニズム.動画でわかる 呼吸リハビリテーション第4 版.高橋仁美 ほか 編.中山書店,2016.40-44.〔高橋仁美〕(5)排痰ケア排痰法は気道内に貯留する気道分泌物の排出を有意に促進するための手段であり,気道クリアランスともいわれている.排痰法の基本的な考え方は分泌物の排出障害,すなわち生理的排出機能レベルを超えた分泌物貯留に対し,粘液線毛輸送能など生体本来の分泌物排出機能を補助あるいは代用することにある.適用は,急性および慢性呼吸障害を問わず,明らかな気道内分泌物の貯留を認め,かつ自力での分泌物の喀出が十分に行うことができない場合や喀痰量が多い(30 mL/日以上)患者である.気道分泌物が貯留していない場合,自力での排出ができる場合は適用にならない.慢性呼吸器疾患の中でも気管支拡張症は慢性的な分泌物貯留や気道閉塞,繰り返す気道感染が主な特徴であり,排痰ケアは重要な治療になる.しかしCOPD 患者をはじめとした他の呼吸器疾患患者でも,感染増悪時や増悪後,また他の呼吸器疾患を合併していることも多いため,分泌物貯留が問題となるようなことも少なくない.日々排痰に多大な労力を費やすことが日常生活活動や運動療法実施の妨げとなることや,分泌物の貯留が呼吸困難の原因となっていることもあるため,動作を行う前や運動療法実施前に適切な排痰ケアの実施が必要である.排痰法の目的は,呼吸困難感の軽減,感染予防,急性期肺合併症の予防と治療,肺機能の改善,エネルギー代謝亢進の抑制,ADLの向上などが上げられる.