ブックタイトルエキスパートが秘訣を語る 循環器薬物治療の極意
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エキスパートが秘訣を語る 循環器薬物治療の極意
2総 論幅広い視野と視点をもっておく. 現在,数多くの薬物が循環器疾患の治療に用いられている.厚生労働省から発表された平成28年社会医療診療行為別統計の概況に薬剤点数の構成割合が示されているが,そのトップが約20%を占める循環器系薬剤である.実際,循環器診療について学ぶ際,誰もが循環器系薬物の用いかたを覚えることから始めなければならない.医学生のころは縁遠いと思われた生理学や薬理学の考えかたを生かすのも,ちょうどこのころである.. だからこそ,循環器疾患の治療を行うとき,「まず,どの薬から使おうか」という選択肢から入ってしまいやすい.自分のよく知っている事実が大きく見える,重要に見える,それしか視野に入ってこないという選択バイアスが働きやすいことは案外忘れられている.. 疾患の管理・治療には,薬物療法と非薬物療法がある.非薬物療法には,非侵襲的なもの(ライフスタイルの是正,食事療法,運動療法,生活改善など)と侵襲的な治療(カテーテル治療,デバイスを用いた治療,手術療法)が含まれる.数多くの循環器疾患に,生活習慣が深く関与しているのは周知の事実である.また,医用工学が進歩した今,数多くの侵襲的治療が開発され,利用可能なツールとして私たちの前に存在している.. 今後,長い将来にわたって,薬物療法が循環器疾患の治療・管理のかなめであることは間違いがないだろう.しかし,薬物療法は,非薬物療法のうち非侵襲的なものと比較して副作用が多いというデメリットがある.また,侵襲的な非薬物療法の多くに「根治的」であるというメリットがあるのに対して,薬物療法のほとんどは,「非根治的」で,一生服用してやっと管理できるというツールである.薬物療法は,非薬物療法を含めた広い土俵で考えてこそ,その強みを生かすことができる.クリニカルエビデンスが意味するところを知っておく. 循環器系薬物の特徴のひとつに,その多くにおいて大規模臨床試験という根拠がある,クリニカルエビデンスをもつという強みがあげられる.歴史的に,循環器系薬物ほど,クリニカルエビデンスやそれに基づいたガイドラインが支持する薬物療法は少ないと言ってよいだろう.. 心血管イベントというハードエンドポイントを減少させるという根拠は,これらの薬物を最も安心して使いやすい薬物としている.しかし,それだからこそ過信に陥りやすい.「こAB薬物治療を行う前に知っておきたいことY