ブックタイトルガイドライン準拠 C型肝炎治療Q&A

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概要

ガイドライン準拠 C型肝炎治療Q&A

18 Ⅰ.C 型肝炎治療の1-2-3:専門医への紹介において一人の患者を前にした場合結果ではなく,何らかの数字が記載されている場合)には,血中にHCV RNA が存在するので,針刺し事故によるHCV 感染の可能性があります.? HBV とは異なり,HCV では抗 HCV 免疫グロブリンやワクチンが開発されておらず,感染直後にこれらの投与を行うことによって感染を防御することはできません.体内に刺入されたHCV が自然に排除され,持続感染が成立しないことを期待しながら,血液検査を行いつつ経過観察することになります.B 針刺し事故後の経過観察? 通常,針刺し事故直後,1カ月後,2カ月後,3カ月後,6カ月後に,血液検査により,AST値・ALT 値,HCV 抗体,HCV RNA 量などをチェックします(表7 - 1).HCV RNA 量がずっと陰性(「検出せず」)のままであれば感染は起こっておらず,問題ありません.もし一時的にでも感染が成立した場合,HCV 抗体が陰性の段階で,すでにHCV RNA 量は陽性となりますが,この場合でも免疫機構によってHCV が自然に排除される可能性があるので,すぐに治療を行う必要はなく,そのまま経過観察を行ってください.いったん陽性になったHCV RNA 量が治療を行わないまま自然経過で陰性(「検出せず」)となり,その状態が持続すれば,やはり持続感染は成立しなかったと考えられるので,治療の必要はありません.? しかし,いったん陽性になった HCV RNA 量が低下することなく,上下に変動しながら陽性のまま推移する場合は,持続感染が成立したものと考えざるをえないので,通常のC 型慢性肝炎に準じて抗ウイルス治療の対象となります.なお,一時的に感染が成立したのち,AST 値・ALT 値の上昇や黄疸の出現などをともなって急性肝炎を発症することがありますが,よほど肝予備能が低下して劇症肝炎へ進行するおそれがないかぎり,とくに治療は必要なく,HCV RNA 量に注目して経過観察を行ってください.なお,このような場合,肝庇護薬であるグリチルリチンの静注投与が行われることがありますが,これはHCV 排除を阻害する可能性があるため勧められません.(田中 篤)表7-1 針刺し事故が起こったときの検査と対応患者のC 型肝炎ウイルス(HCV)マーカー患者の検査結果による対応医療従事者のHCV RNA量患者の検査結果と医療従事者の経過からHCV抗体 HCV RNA量 判断される対応陰性陰性感染のリスクなし─ ─陽性陰性感染のリスクなし─ ─陽性陽性経過観察*持続陰性感染なし→治療適応なし陽性→陰性一時的感染のみで自然治癒→治療適応なし持続陽性持続感染→治療適応あり*  針刺し事故直後,1カ月後,2カ月後,3カ月後,6カ月後に,AST 値・ALT 値,C 型肝炎ウイルス(HCV)抗体,HCV RNA 量などを血液検査でチェックする.