ブックタイトル事例・症例に学ぶ 栄養管理 改訂2版

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概要

事例・症例に学ぶ 栄養管理 改訂2版

3栄養不良が,日本人の新身体計測基準値JARD2001 の50%タイル値以下である場合には,1年後の日常生活動作 activities of daily living : ADL の低下が認められている.臨床検査 血清Alb値が3.5g/dL以下の者の死亡率は,3.5g/dLを上回る者に比べて2倍近くなる.生理学的にも3.5g/dLを下回ると内臓蛋白質の減少が引き起こされ,2.8g/dLを下回ると浮腫が引き起こされる.疫学的調査結果から,高齢者の血清Alb値は,総死亡率(全死因を含む)に関して,独立した危険因子であることが明らかになっている. 血清Alb値3.5g/dLは,臨床診断,治療の段階ではなく,食事や栄養補助食品を用いた経口的栄養補給によって改善可能な段階である.それゆえ,栄養管理サービス導入の指標として,3.5g/dL以下の場合にはPEMの中等度リスク者として,国際的に評価・判定に活用されている.しかし,在院日数の短い急性期医療の現場においては,プレアルブミンなどの半減期の短い蛋白質指標を合わせて活用する必要がある. なお,血清Alb 値は脱水状態にないことを条件として評価・判定する.蛋白補給量の決定に際して腎機能を考慮するためにBUN,Crをチェックしておく.そのほか,脂質プロファイル,血糖,HbA1cなどの生活習慣病の問題がみられる場合でも,PEMが評価・判定されれば,PEMが優先的に解決すべき栄養問題として取り扱われる.食事調査 蛋白質,エネルギーの摂取量を簡易食物摂取状況調査,簡易式喫食率調査などを用いて簡便に評価する.食事からの蛋白質,エネルギーの摂取量が少ない場合は,そのほかの栄養素(ビタミン,ミネラル)や水分の摂取量も少ないと考えられる.また,食欲,摂食・嚥下機能,嗜好やアレルギー,食習慣,食環境上の問題を十分に明確にする.安静時エネルギ-消費量 PEM では安静時エネルギー消費量restingenergy expenditure:REEは低下し,疾患によるREEへの影響も大きいので,PEMの患者のエネルギー補給量の算定にあたっては間接熱量計を用いて実測することが望ましいとされている.問診ツール 近年,日本をはじめ世界各国において簡易栄養状態評価表mini nutrition assessment:MNAが栄養スクリーニングとして活用されている.6項目の問診項目(14 ポイント)のうち11 ポイント以下の場合,低栄養の恐れあり(Atrisk)と判定される.PEM の栄養ケア計画とアウトカム PEMには,通常,エネルギー補給量は,REE値の1.2?1.5倍,蛋白質も通常の体重1kg当たり1gよりも増大させ,1.2?1.5g/kgの補給を行う.しかし,食事量が減少してきているPEMの患者にとっては,通常の食事からの摂取は困難なので,効率的な経口栄養補助食 oralnutritional supplements:ONSや経腸栄養剤などを上手に利用する必要がある.さらに,場合によっては,胃瘻による強制経腸栄養法などが行われる. PEMの患者に対してこのようなONSを用いた栄養補給を行った無作為割付比較試験では,38 試験中83%において統計的に有意な体重の増大が,17 試験中71%において有意な身体機能(筋力,歩行距離,well-being,身体活動レベル)の改善,17 試験中60%において合併症率や在院日数の有意な低下が観察されている. なお,介護保険施設においては,栄養マネジメント加算によりPEM の栄養スクリーニングが行われ,個別の栄養ケア計画が作成されている.一方,医療機関においては,栄養管理実施加算(平成14年4月から入院基本料および特定入院料に包括化)によって入院時に患者のPEM の栄養リスクが把握され,さらに,平成22年4月から栄養サポートチーム加算によるハイリスクアプローチが一般病院において推進されている.