ブックタイトル実践!ケースで学ぶ栄養管理・食事指導エキスパートガイド

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概要

実践!ケースで学ぶ栄養管理・食事指導エキスパートガイド

4.糖尿病25疾 患 別膜症など)合併症管理目的での食事療法であることをふまえて,急激な血糖低下を起こさないような栄養食事指導を行う必要があります. 20 歳ごろの体重を確認し,目標体重を70 kg と設定しました.現在の活動量(28 kcal/kg/日)などを考慮し,2, 000 kcal/日を当面の摂取エネルギー量とし,インスリン抵抗性の改善を目的とした肥満対策が重要な管理ポイントと考えました. とくに,患者さんは仕事のため付き合い(外食・飲酒)の頻度が多く,食生活管理が難しい状況でした.ここでの指導ポイントは,インスリン分泌能の低下にともなう「食後高血糖」を是正するため,空腹時の飲酒を控えてもらい,「豆腐」や「えだ豆」などをすぐに注文し,提供される食品を先に食べてから飲酒を行うこと,さらに,お酒についても糖質含有量の少ない種類を選び,高血糖への対策を行ってもらいました.また,高血圧など合併症を視野に入れた食事指導が必要となり,摂取食塩量については6 g/日と設定し,外食時や飲酒時に摂取する「高食塩含有食品」を具体化して説明し,目標量に近づけてもらいました. InBodyR などによる体成分分析の結果(図4 - 2)から,インスリン抵抗性の改善を目的とした運動療法の併用が必要と考え,骨格筋量や体脂肪量の変化に関する情報提供を行い,行動変容や療養指導の継続に結びつけます.経 過 入院後の一時的な強化インスリン療法による糖毒性解除,および食事療法による減量(78.7 kg → 75 kg/28 日間),体脂肪減少(28. 5% → 27. 0%)により,糖尿病の病態増悪を招いていたインスリン分泌能およびインスリン抵抗性が改善し,血糖状態は改善しました.さらに,食事療法,禁煙・減酒などの生活習慣改善により今後の合併症進展リスクの軽減が期待され,インスリン療法から経口血糖降下薬に戻して退院となりました.退院半年後の外来通院時の身体評価では,体重が70. 4 kg,体脂肪量は15. 9 kg に減少し,骨格筋量は30. 0 kgと維持され,食事療法・運動療法が奏効したと考えられます.ただし,糖尿病合併症の進行が著明であり,日々の運動としては現時点では散歩程度に抑えています.患者さんは,仕事上の飲酒環境は継続しているものの,普段の食事量の調整を行っています.今後は合併症病態をみながら運動療法の負荷量を調節する予定です.(稲垣暢也 長嶋一昭 幣憲一郎)