ブックタイトル子どもの風邪
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子どもの風邪
91 なぜ食い違うのか 医師でも,自分の子どもに熱が出れば慌ててしまうものです.ましてや,若いお母さん,お父さん,お孫さんが可愛くて仕方ないおばあちゃん,おじいちゃんが,子どもの熱でびっくりするのは当然で,お気持ちはとってもよくわかります.でも,風邪って非常に手ごわいもので,医者でもはっきりした診断はできません.治療法もありませんし,風邪薬もほとんどの場合は無意味です. 日本では,1 回の風邪でも,いくつもの病院を受診することがありますね.これは,フリーアクセスという制度で,どこを受診するのも自由だからです.実は,世界のほとんどの国はかかりつけ医制度ですから,契約しているお医者さんの診療予約をとって,何日か後に診てもらうことになります(緊急の場合は救急病院が診てくれますが,高額の医療費がかかります). あちこち受診した結果,ある先生には風邪っていわれたり,ある先生には気管支炎っていわれたりでは,混乱してしまいますよね.使われるお薬が違うことも少なくありません.お願いしたいのは,風邪が治らないからといって別の病院に行って違う治療をしてもらおうと思わず,できるだけ最初に受診した病院に行ってください,ということです.診てもらうのは小さい頃からずっと受診しているかかりつけのお医者さんがベストといえます.病気は,経過をきちんとみることが重要です.しっかりした小児科の知識をもっていれば,風邪と診断するお医者さんも,気管支炎と診断するお医者さんも,ひどく悪くなったときの対処は同じで,また,治り方も変わりません. 医者によって病名が変わったり,お薬が変わったりするのは,わたしたち医師の責任です.日本の医学会が,これまで“ 風邪” の診療にあまり熱心に取り組んでこなかったからなのです.風邪で病院にかかるのが一番多いのだから,そこをきちんとしてくれないと困りますよね. 今,ようやく多くの医師がそれに気づいて,“ 風邪” 診療をなんとかしようという機運が高まっています.とくに小児科の医師は子どもの風邪に熱心です.頑張って一番よい風邪診療をみつけて,それを統一見解にしますので,もうしばらくお待ちください.この本が,そのための一助になるように願っています.保護者の方へ