ブックタイトル子どもの風邪
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子どもの風邪
1132 風邪のリスクマネジメントCRPは有用か? CRP(C-reactive protein)は感染症の指標としてどこまで有用なのだろうか? CRPは1930年に肺炎患者の血清からみつかったタンパクで,肺炎球菌がもっているC 多糖体に反応するため,CRP と名づけられた.CRP は肺炎からの回復とともに血中からすみやかに消失し,健康な人間の血清からはほとんど検出されなかったため,当初は肺炎や感染症の指標であると考えられた.しかし,肺炎以外の炎症や組織の破壊でもCRP が増加することがわかり,現在では炎症や組織障害が存在するという指標と考えられている. 重症細菌感染症の診断にCRP 値が有用かどうかは議論のあるところである.これまで,重症細菌感染症の指標としてCRP 値を利用できないか,いくつかトライアルが行われているが,カットオフ値をいくらに設定しても満足した指標にはならなかった4 , 5).とくにHib による細菌性髄膜炎のように,急速に菌血症が進行して髄膜炎に至るような病気の発見にCRP 値は有用ではない. では,CRP をどのように使いこなせばよいのだろうか? CRP は,炎症による組織障害の開始から4 ~ 6 時間経過後に産生が始まり,8 時間ごとに倍増し,図1のように二次曲線的な上昇カーブとなる.これまでの議論では,ワンポイントのCRP 値を指標にできないかということであったため,満足した指標になり得なかった.たとえば,炎症が起こってすぐのCRP値と,十分に時間が経った後のCRP値とでは意味が違うのである.図1のB地点での5.0mg/dLのCRP値より,A地点での2.0mg/dLのCRP値のほうがリスクは高い.小児では,CRP値がこの曲線から大きく乖離して上昇していないかをよく観察しなければいけない.ワンポイントの値だけでは判断できないということに注意が必要である6).CRP値経過時間AB図1 CRP値の上昇