ブックタイトル実践力UP!NCPR(新生児蘇生法) 37のポイント

ページ
10/12

このページは 実践力UP!NCPR(新生児蘇生法) 37のポイント の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

実践力UP!NCPR(新生児蘇生法) 37のポイント

60Point ● シミュレーション実習は失敗してナンボ「ハイリスク分娩に数多く立ち会い,1 例でも多くの蘇生を経験する」ことが,新生児蘇生を身につける最も効果的な方法です.「あの時,もっと早く人工呼吸を開始しておけばよかった… 」という反省は,二度と忘れることのない学びになるでしょう.しかし実際の蘇生において,赤ちゃんの予後を悪くするような失敗は許されません.そして重症仮死は非常にまれなことであり,誰もが等しく経験できるわけではありません.そのような臨床経験を補完できるのがシミュレーション実習です.シミュレーション実習というと「高価なハイテク機器」を連想しませんか? 臨床現場に近い「リアリティ」は大事な要素ではありますが,本質ではありません.シミュレーション実習の本質は,「成功が保証されていない挑戦的な状況において,患者さんに迷惑をかけることなく,失敗から学びを得ることができる」ことにあります.リラックスした環境で,手取り足取り介入を受けて,ひとつの誤りもなくシナリオを完結させることが実習の目的ではありません.シナリオ中の反省点について,他人から「ここが間違っていたね」と指摘されるのではなく,「あぁ,こうするべきだった!」と自ら気付くことによって,効果的な学びを得ることができます.シミュレーション実習においては,実際の臨床場面で起こり得る失敗のチャンスがあることが重要と考えています.胸骨圧迫まで必要とした症例2 を考えてみましょう(p. 10).赤ちゃんの予後を悪くするような失敗には,どのような可能性が考えられるでしょうか?症例2 において起こり得る,重大な「失敗」1.評価の遅れ・最初の心拍数確認を忘れ,蘇生開始から30 秒以上かかってしまう.・人工呼吸開始から心拍数確認まで30 秒以上かかってしまう.2.誤った評価・心拍数を過大評価して,必要な処置が開始されない.・あえぎ呼吸が出現した時点で,人工呼吸を中止してしまう.3.不適切な処置・マスク密着,気道開通,十分な加圧が行われていない人工呼吸.・浅すぎる,遅すぎる,再拡張の不十分な胸骨圧迫.・胸骨圧迫開始後にも酸素濃度を上げない.4.事前準備やチームワークの問題・事前の患者情報が共有されず,人数や物品の準備が不完全.・役割分担が明確でなく,必要な処置が効果的に実施されない.・共有すべき情報が伝えられず,コミュニケーションが取れない.このような失敗のチャンスがなく実習が完結したとしても,そのスタッフは実際の臨床で失敗なく蘇生ができるでしょうか? それでは失敗のチャンスを提示し,実際の臨床と遜色ないような経験ができるようなこだわりのシミュレーション実習の実際について解説したいと思います.