ブックタイトル小児科医が知っておきたい!夜尿症のみかた

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概要

小児科医が知っておきたい!夜尿症のみかた

夜尿症の子どもの親の気持ちと認識製薬会社が実施した夜尿症の子どもをもつ親へのアンケートによれば,「夜尿をストレスと感じるか?」との質問に約8 割の母親が「ストレスと感じる」と回答している.また母親に「夜尿で怒ったことがあるか?」と質問すると約4 割が「怒ってしまったことがある」と回答している.夜尿症という病気に対する親の認識についてのアンケート結果も報告されている.それによれば,大多数の親は夜尿を「心の病気」と捉え,「尿意で目覚めない自分の子どもに疑問」をもち,「比較的早い時期に治る」と期待し,「排尿をがまんすることは身体に良くない」と認識している 1).夜尿症の病因については,古くから「幼少時からのトイレットトレーニングを含めた育て方やしつけの失敗」,あるいは「患者本人や親の心の問題」と捉える考え方があり,現在もそのような間違った考え方をしている親は少なくない.こういった考え方は,親が自身を責めたり,患者を叱ったりすることにつながり,親子関係の悪化にもつながる.夜尿症は遺伝的素因に基づく睡眠中の排尿反射抑制機構の未熟性が主な原因と考えられており,そういった素因を有する子どもでは,たとえ理想的な育て方をしたとしても夜尿症の治癒は遅れる.また子どもが覚醒できずに夜尿することを,「眠りが深すぎるため」,あるいは「自覚が足りないため」と考え,子どもを夜間睡眠中に起こしてトイレに行かせている(強制覚醒排尿)場合がある.強制覚醒排尿を促すことは,睡眠不足を招くだけでなく,血圧調節などの生理的日内変動に異常をきたす可能性が指摘されている 2).また夜間の睡眠を妨げることで睡眠中の尿中のナトリウム排泄が増加し夜間多尿傾向になり,夜尿症の治癒を遅らせる可能性もある 3).また子どもが昼間に尿失禁する原因の多くは過活動膀胱による蓄尿機能の低下が原因であり,そういった患者では尿意をがまんすることが行動療法の一つであるが,多くの親は「排尿をがまんすることは身体に良くない」と考えている.夜尿症の診療の第一歩は,子どもはもちろん,親に対しても夜尿の病因を正しく説明し,親子の心の負担を軽減するとともに正しい治療法を理解してもらうことが大切であるが,私たち医療側は患者である子どもの心理のみならず,親の認識も理解しておく必要がある.文献1 ) 藁科三枝,篠崎千春,前島有子,他:夜尿症児の親の夜尿症に対する認識について.夜尿症研究,12:29-34, 2007.2 ) Graugaard-Jensen C, Rittig S, et al. :Nocturia and circadian blood pressure profile in healthyelderly male volunteers. J Urol, 176:1034-1039, 2006.3 ) Mahler B, Kamperis K, Schroeder M, et al. :Sleep deprivation induces excess diuresis andnatriuresis in healthy children. Am J Physiol Renal Physiol. 302:F236-243, 2012.Column ?24 知っておきたい夜尿症の基本 ?概念,診察,治療?