ブックタイトル小児科医が知っておきたい!夜尿症のみかた
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小児科医が知っておきたい!夜尿症のみかた
では成人まで移行するリスクは高い(図1-3).本症例では便秘や発達障害の併存症も認めないが,夜尿症の子どもにおいては,LUTS の他にも遺糞や便秘および発達障害の併存率も高いため,それらのスクリーニングとしての質問や検査も忘れてはならない.初診時には本人と親の疑問や不安を受け止めることが基本である.その上で,夜尿症の病因を理論的に説明し,具体的な対処法を示し,治療の必要性や重要性,治癒までの見通し(1 章参照)を示すことが重要である.また排尿日誌を記録させることはLUTS の合併の有無のみならず,夜尿症治療へのモチベーションを向上させるのにも役立つ.排尿日誌の記載にあたっては,夜尿のみならず日中の排尿についても記録してもらうが,夜尿についての情報は最低2 週間分,また昼間の飲水と排尿の記録(起床から就寝までの間の排尿時刻と排尿量,およびLUTS の有無)については最低2 日間(48 時間)分が必要である.排尿日誌はできれば患者本人に記録させる.患者が低年齢で無理なら保護者が記録する.夜間尿量は夜尿量(夜尿をした日の使用前後のオムツの重量差で計測)とその日の朝の起床時第一排尿量を足したものとし,機能的膀胱容量は昼間に精一杯がまんした上で排尿した際の1 回排尿量(がまん尿量)で判断する.初診時の患者と保護者への対応であるが,まず夜尿症の一般的病因論(覚醒障害を基盤とした睡眠中の排尿抑制反射の欠如または夜間多尿)そして病因に基づいた治療と予後について説明し,その上で,本症例の夜尿症の特徴(睡眠中の排尿抑制反射が欠如しており,膀胱容量が小さい)について解説する.次に具体的な対策として行動療法(1 章参照)を実施してもらうこととした.2 回目の受診(初診から2 週間後)初診からおよそ2 週間後に母親に再来院してもらい,持参した患者の排尿日誌(p.114,付録 表4 参照)を基に,日中の排尿回数や量,飲水量,夜尿時刻,夜尿量などの情報を確認した.患者は2 週間の記録に基づいた夜間尿量平均値が200 mL と期待膀胱容量(25 ×[年齢+2]mL = 275 mL)を下回っていたため,夜間尿量は多くないと判断した.また3 日間計測した起床時第一尿の尿比重の平均値も1.022 と正常に濃縮された尿であったことから,夜間の抗利尿ホルモンの分泌不足も考68 case study ?診療のすすめかた?