ブックタイトルイナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる
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イナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる
477 エコーは最コー! 仙髄以下末梢が障害された場合は,排尿筋活動低下を呈しやすい.主な疾患として腰椎椎間板ヘルニアなどによる馬尾神経障害,骨盤外傷や直腸がん手術などによる骨盤神経障害,糖尿病,アルコールなどによる末梢神経障害がある. まれなものに症例にあげたElsberg症候群がある.この症候群は,狭義には性器ヘルペス感染に併発する仙髄神経根炎に伴う尿閉を指し,広義には尿閉を伴う髄膜炎を指す3 , 4). 発症後最初の1年に30%が再発するといわれている5).また仙髄神経根炎を伴わない無菌性髄膜炎により尿閉を示す場合,髄膜炎-尿閉症候群(meningitis retention syndrome:MRS)と呼ばれる6, 7).Elsberg症候群,MRSともに,HSV-2が関与することが多いが,後者はmycobacteria,listeria なども原因となる8). Elsberg症候群とMRSは同義との記載もある1).ともに経過良好のことが多いが,急性期の尿閉に適切に対処して,膀胱過伸展を防ぐことが重要である.(楠川加津子,林 寛之)発熱の鑑別診断,シマウマ,オッカムとヒッカム今回のポイント 異常な症状や所見が多岐に及ぶ事例でどのように鑑別診断を行うかよくできている点・ 排尿困難の鑑別には,残尿量が鍵を握っており,その評価のためにエコー検査が有用であることが理解できている・ 排尿困難,発熱,頭痛,腰痛といった多彩な症状があることが聴取できているさらに改善すべき点・ 発熱と排尿困難については症状開始(オンセット)の情報があるが,頭痛,腰痛については情報がない・すべての症状が説明できるような病態を思い浮かべることができていない4つの症状 今回の症例はどこから取りかかるかが難しい.イナダ君がブリ先生にプレゼンテーションしているように,排尿困難,発熱,頭痛,腰痛の4つの症状があるため,まずはその優先順位をつける必要がある.このとき,Ⅰ- 2(p.12)で触れたhigh yield,low yieldの考え方は役立つかもしれない.すなわち,発熱はあまりに鑑別診断が多すぎるためlow yieldだが,残りの3つは部位が明確であり,鑑別診断も発熱ほどは多くないため,いずれもlow yieldではないだろう. その意味で,排尿困難の鑑別診断から糸口をつかんで臨床推論が進んだというセンスは悪くないだろう.しかし,発熱と排尿困難については症状のオンセット(onset)の情報がある(1週間前から発熱,3日前から排尿困難)ものの,頭痛と腰痛については,LQQTSFAといった基本的な情報収集が進まずに早期閉鎖してしまっていることがわかる.