ブックタイトルイナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる

ページ
14/16

このページは イナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる の電子ブックに掲載されている14ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

イナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる

62Ⅰ 診断推論傾聴と病歴情報,解釈モデルの意義今回のポイント 体重減少のような部位を特定できないような主訴に対しては,あらかじめそれぞれの主訴に対し,どのような順序で,どのような質問をして,鑑別診断を絞り込んでいくかを考えておくことがとくに有用であるよくできている点・ 患者の気持ちに寄り添って傾聴・共感ができている・ 話の流れから解釈モデルを引き出せている・ 生命にかかわる悪性腫瘍を鑑別診断の主軸に据えているさらに改善すべき点・ 患者側のストーリーに振り回されている・ 網羅的情報収集と分析的思考を徹底すべき臨床推論の枠組み 近年,卒前医学教育において医療面接の方法論なども教えられるようになり,患者側もその点については「医師のマナーがよくなった」などの感想を述べているのを散見する.イナダ君も,患者の気持ちに寄り添うような形で傾聴・共感ができており,また話の流れから解釈モデル(患者側が自分の問題をどう解釈しているか)も引き出せている.さらに生命にかかわる悪性腫瘍を鑑別診断の主軸に据えていて,これらの点は非常によい.一方で,臨床推論という観点からは患者側のストーリーに振り回されている印象がある.加えて,系統立った考えができていない場合には,網羅的情報収集と分析的思考を徹底すべきだが,そのような振り返りが十分にはできていないようにも見受けられる.病歴と患者の話の傾聴の関係 患者の気持ちに寄り添うような形で傾聴・共感できていると思えるのは,イナダ君がした質問に対して,患者が質問への回答だけでなく,自分なりの情報や解釈をつけ加えるというパターンで話しているのに対し,イナダ君はその流れを引き戻すのではなく,その流れに乗るように話しているからである.たとえば,「どのくらい(体重が)減りましたか?」という質問に対して,患者は「この半年で10kg以上は減ったかな」という回答に,「3度のメシは,コイツ(妻)が栄養士に聞いてから猛勉強して,いつも手の込んだ料理をつくってくれてる」という食事に関する情報を加えているが,イナダ君は「奥さん,料理お上手なんですね.ほかに何か具合が悪いところはないですか?」とその情報をいったん受け止め,別の症状に関する質問に切り替えている. ところが,このように話が流れてしまうことで,体重減少に関連した情報収集が全く不完全な