ブックタイトルベッドサイドの小児神経・発達の診かた 改訂4版

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概要

ベッドサイドの小児神経・発達の診かた 改訂4版

149脳神経cranial nerve は左右ou 対からなる末梢神経である.各脳神経は大脳,脳幹に出入りする.高位の順を念頭に置き,Ⅰ~?まで順序に従って診察を行うことが重要である.A 嗅神経(Ⅰ)嗅神経は純感覚性の脳神経であり嗅覚をつかさどる.嗅覚とは,「におい」の感覚である.揮発性物質が鼻腔内の天蓋にある嗅粘膜に付着して嗅覚器の嗅細胞を化学的に刺激することで生じる感覚である.嗅細胞にある受容体が刺激されると嗅神経を通じて頭蓋内の嗅球へと伝わる.その後,側頭葉内側(鉤),大脳皮質嗅覚野(眼窩前頭皮質)などに刺激が送られ,においを感じる.1 診察法においによっては不快感を与えることがあるため,診察の最後に行う.指示が困難な場合は,単純なにおい(カレーのにおい,ベビーパウダーのにおい,など)に対する反応を観察する.一側性の嗅覚低下は病的意義があるため,一側の鼻孔をおさえて他側でにおいをかがせる.感染やアレルギー性鼻炎,慢性副鼻腔炎に伴う嗅覚低下が原因の大部分を占めるため除外してゆく.視野障害を伴う場合は腫瘍が鑑別に挙がる.先天性の嗅覚異常では,においに対する反応自体がないため,病歴の取り方に留意する.以上の診察で嗅覚障害が疑われた場合は,アリナミンRなどの強い刺激物質を静脈注射する嗅覚検査がある.2 嗅覚異常嗅覚過敏,異臭症では側頭葉てんかんが鑑別に挙がる.視野欠損・視神経萎縮がみられる場合は,髄膜腫を鑑別に挙げ嗅覚検査を行う.先天異常によるものとしては,Kallmann 症候群,Johnson 神経外胚葉症候群,Kartagener 症候群などが鑑別に挙がり,頭部MRI・To 強調画像で示される嗅球の形性異常が診断の手がかりとなることがある.8