ブックタイトル国立がん研究センターの乳癌手術
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国立がん研究センターの乳癌手術
著者らは,他出版社の発刊ではあるが,図説臨床[癌]シリーズ:乳癌(1986 年初版発刊),新・癌の外科- 手術手技シリーズ:乳癌(国立がんセンター編,2001 年初版発刊)を片手に乳癌手術を現場で学んできた.これらの手術書の発刊から30年以上の時間を経たが,乳癌診療はその間大きく変遷を続けてきた.外科治療の分野ではセンチネルリンパ節生検が標準化し,乳房再建が保険収載され,より整容性を重視した低侵襲な外科治療を学ぶことが必要とされている.また,低侵襲で整容性の高い治療の恩恵を受けられる早期乳癌患者は年々増加し続けているが,薬剤抵抗性,放射線治療抵抗性の局所進行乳癌症例は変わらずに存在する.外科治療は数時間で,比較的安価に完結できる優れた治療法であり,その結果は,術者の日々の経験の積み重ねによる技量と知識によって左右されるものである. 国立がんセンターが開設された1962 年から71年に手術した1,212人の乳癌患者の30年予後を次頁に示した.当時は有効な薬物療法や放射線療法が存在せず,またより病期の高い患者が多く,手術の大部分はハルステッド手術や非定型乳房切除術が行われていた.現在では薬物療法,放射線療法などを組み合わせた治療が一般的となっているが,乳癌治療における根治度の点から見ても,現在でも局所治療の重要性,すなわち乳癌治療における手術療法の重要性は失われたわけではなく,より多様化してきている.治療が多様化した今日でも30年間患者を安心して見守れる医療を継承していきたいと考える.序