ブックタイトル国立がん研究センターの乳癌手術
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国立がん研究センターの乳癌手術
第7章 腋窩リンパ節郭清術?69● 早期乳癌に対するセンチネルリンパ節生検が標準化した今日においても,腋窩リンパ節郭清は腋窩リンパ節転移を認める症例においては必須である.局所進行乳癌を先行して手術する機会が少なくなったが,静脈の走行を中心に腋窩の解剖を理解し,基本的な腋窩リンパ節郭清の手技を完全に習得した上で,センチネルリンパ節生検や部分郭清,サンプリングなどより低侵襲な手技を実施することを心がけていただきたい.腋窩の解剖とレベル分類古典的な腋窩の解剖を熟知する● 腋窩の解剖を図1に示す.腋窩の解剖の詳細に関しては佐藤達夫による詳細な論文を一読されることをお勧めする1).図2,3はHaagensenのリンパ節記載にも用いられたRouviereの古典的な分類である.徹底した腋窩リンパ郭清が基本手技であった時代のものであるので参考にされたい.さらに本章中の郭清終了後の写真〔図27(p.84),図32(p.87)〕と対比していただきたい.腋窩リンパ節のレベルと郭清範囲● 腋窩リンパ節の領域はレベルⅠ:小胸筋の外側(腋窩静脈リンパ節),レベルⅡ:小胸筋の背側(胸筋下リンパ節),レベルⅢ:小胸筋の内側(鎖骨下リンパ節)に区別される(図4).● レベルⅠの腋窩リンパ郭清の範囲は以下のとおりである 頭側 腋窩静脈の前面 外側 広背筋前縁 内側 小胸筋外縁 長胸神経が前鋸筋に入るところ 尾側 胸背動静脈の広背筋と胸壁への分岐部までPOINT 静脈の走行をナビゲーターにする 腋窩郭清では,静脈に対する配慮が極めて重要である.それは,前/ 側方より進入した場合に静脈が一番浅い位置を取っていることで郭清のナビゲーターとなるからである.静脈を基にした腋窩郭清のポイントを図5に示した.動脈,神経は基本的には静脈と伴走しており,前方より静脈の配置を取ることが多い.1第7 章腋窩リンパ節郭清術