ブックタイトルTEXT形成外科学 改訂3版

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概要

TEXT形成外科学 改訂3版

13Ⅲ.精神医学的知識 形成外科領域の医療従事者に精神医学的素養が求められるのはどのような理由によるのかを,まず考えてみたい.患者を全人的に捉えるために,精神医学的素養が必要である たとえ,形態の異常をもって治療を求めて来た人であっても,同時にこころの悩みをもつ人であるということを認識することが大切である.医療者はややもすれば自分の専門の立場のみから診断や治療を行うが,医療においては,目の前の患者を全人的にとらえ,患者中心(patient centered)の治療をするためには,相手のこころの状態を的確に把握することが必要なことはいうまでもない.形成外科医療は,特殊なこころのありようを扱う領域である 「形成外科は形の異常を治すことによってこころの歪みを取り除く診療科である」と同時に,「こころの歪みのために,形を整えることを希望して訪れる診療科である」ともいえる. 人はだれでも健康でありたい,そしてより美しくありたいと願うものである.したがって,身体の異常があれば,そのことを気に病み,時にはそれを治したいと願うものである.特にそれが,外部から明らかに認められるような形の異常や皮膚の色合いの変化であれば,本人はそれを恥ずかしいこと,隠したいことと感じ,そのことがこころの重荷となることも少なくない.それも,本人の重荷ということだけにとどまらず,時にはその子の親たちもまた,その責を負う気持ちに追いやられる場合も少なくない. その一方では,身体の正しい姿を追い求めるあまり,周囲のものからは異常と思えぬ場合でも,“形”にこだわり,その訂正を強く求めて訪れてくることもまれではない. そのようなさまざまな“こころ”を抱いて訪れるところが形成外科である.相手のこころを正しく捉えることによって,適切な治療が可能となる このように考えると,形成外科を訪れる人はいろいろの“思い”をもっていると考えることができよう.したがって,どのような部位を治したいのか,治療によってどのような“形”をもちたいと望んでいるのかをきちんと把握せず,いたずらに治療者の判断のみによって治療を試みたとしたら,そこには,治療を受ける者と,治療を行うものとの“思いの行き違い”が生じ,おもわしくない治療結果がもたらされることもありえよう. 以上のように考えると,形成外科の医療に携わる人たちは常に精神医学的視点をもつことが求められているといえよう.全人的医療のために 適切な医療を行うためには,身体のみならず,こころのありようをも診なくてはならない.ここでいう,相手のこころのありようとは,患者のみならず,本人をとりまく家族や関係者をも含めた「こころのありよう」であることはいうまでもない. 相手のこころのありようを捉え,理解するために必要なことを簡単に述べると以下のようなことになろう(表1).a よい人間関係をつくる 患者あるいはその関係者と医療者が初めて会うときは,多くの場合,それまで何の知己もなかった人同士が向き合うことになるといってよいであろう.その人たちが,たまたま医療というつながりで,人間関係をもつことになるわけA. なぜ,形成外科領域の医療従事者に精神医学的素養が求められるのか123B. こころの理解のために1